「何者かにならないと、この世界で用なしになるんじゃないか」

――「何もない」?

渡辺 そういう、こだわりがないとこがダメなんだなって。だって、せっかくインタビューしてくださっても、私みたいな「流れに身を任せていて、気がついたらここにいたんです」なんて、聞いてる方はつまらないじゃないですか。

 もっと波乱万丈で「私、こうこうこういうのになりたくて……」とか「こういうふうに方向転換していったんです!」って話せたほうが、みんな面白く感じるんだろうなって。

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 もっと「何者かにならなきゃいけない」、そうじゃないと、この世界で私は用なしになるんじゃないかなと思っていた時期もありました。

写真=『不機嫌ばかりな私たち』〔渡辺満里奈 著/講談社 刊〕より

――何者かにならなきゃいけない。

渡辺 でも爪あと残さないのに、よくここまで長く頑張って来たなとも思う。それはもう相性が良かったとしか思えない。だって気がついたら「渡辺満里奈ってまだいるの?」みたいな感じじゃないですか(笑)。

ママタレには「なれなかった」? 渡辺満里奈が型にはまらない理由

――全然そんなことは思わないですけど、渡辺さんはたとえば「アイドル」とか「女優」とか「ママタレ」とかそういう「肩書き」みたいなものがしっくりこない方だなと思っていました。型にはまらない、常に自然体というか。

渡辺 たとえばママになったらすごくきれいに料理作って、写真撮って投稿して……。それが私にはできなかったから、たぶんママタレにもなれなかった。思えば20代後半から30代前半は、「私、出来ないじゃん、それ」っていうのをずっと自問自答していたなと思います。

 でもおニャン子クラブのときから応援してくださる方もいらっしゃるし、私のことをありのままつづったエッセイを読んでくださる方がいる。波乱万丈じゃない、高い目標がない私だからこそ何か汲み取ってくださる方がいるのかな、じゃあこのまま頑張ろう、と思えるようになりました。この歳になって、自己分析してみるとね(笑)。

©佐藤亘/文藝春秋

たどり着いた「無理しない」という生き方

――本の中に「タイムマシンがあって、かつての自分にアドバイスしてあげられるとしたら?」という一文がありました。今空前のアイドルブームの中、一生懸命自分の個性を出そうと頑張っている子たちに、渡辺さんはどんなことを言ってあげたいと思いますか。 

渡辺 「私には何もない」ってずっと悩んでいましたけど、でも考えてみたら好きなものは変わってないんですね。音楽、本を読むこと、映画を見ること……。あと、無理してない、自分自身が。

 エッセイについてもそうです。今回は「更年期」というテーマでエッセイを頼まれて、それが私が今現在思っていること―ー「50代を楽しく生きたい」ということとマッチしている。ああ私の好きなものをピックアップしてもらったんだなってすごく思うんですよ。

ミドルエイジのリアルな思いをつづったエッセイ『不機嫌ばかりな私たち』(渡辺満里奈 著/講談社 刊)

 そう考えると、「あれもやらなきゃいけない」「これもやらなきゃいけないかな?」ではなくて、好きなものがあるならブレずにずっと好きでいることだったり、それを突き詰めて追求して行くことに時間を割いたほうがいい。