――「自分が弱いからなんじゃないか」みたいな。
エマ そうですね。自分が“患者さん”になったことで、医者と患者との上下関係が如実に表れたなと思いますね。
でも、心から心配して、私のためにいろんな策を練ってくれた心あるドクターもまた、数え切れないくらいいて。日本では1000人しかいない難病に対し、玉ねぎの薄皮をはがすように、丁寧にカスタマイズした検査や手術法を考え、携わってくださった医療者の皆さんには、本当に感謝、感謝です。
「こんなことは普通ありえない」出産前は、陣痛に気づかないほどの腹痛に襲われていた
――その後、診断がつかないまま、メンタル的にも厳しい中で出産を決めたそうですね。
エマ 鬱になってアクティビティも落ちてきて、なんとなく、今このタイミングを逃すとこの先一生子どもを持てないのでは、という直感があって。
――妊娠・出産を経て体調に変化は?
エマ 鬱は良くなったんですけど、腹痛はひどくなってて、食べるとのたうち回るほどの激痛が襲うようになっていました。妊娠中は食欲が増していたので、余計に辛かったです。
そんな感じで臨月までずっとお腹が痛かったので、陣痛にも気づかなかったんですよ。
――陣痛に気づかないほどの腹痛とは、凄まじい痛みですよね。
エマ というより、痛みに慣れすぎてしまっていたんです。しかも、腹痛を我慢しすぎて、前駆陣痛に気付かず、お腹の子どもが出産前に子宮内で自分の便を飲み込んでしまう「胎便吸引症候群」を起こしてしまい、子どもが生死の境を彷徨うことになってしまって。
でも、そんな中でも、産院の先生からは、「子どもより、あなたの体の方が心配だ」と言われました。「だって出産したのに、まだもう一人お腹にいるみたいで、こんなことは普通ありえない」と言うんです。
撮影=山元茂樹/文藝春秋
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