名古屋市は「通せんぼ役」を雇用する本気ぶり
ホリエモンこと堀江貴文氏も5月22日にXにて参戦、自らが撮影したと思われるエスカレーターの写真を付けて片側空けに疑問を呈し、この投稿も大きな議論を巻き起こした(写真に付された氏のコメントには不適切な表現があるため供覧しない)。
そしてこれらを呼び水として、ネットメディアだけでなく地上波テレビでもこの話題が、1カ月という短期間ではかつてないほど多く取り上げられることとなったのである。
名古屋市は、埼玉県とともにエスカレーターでは立ち止まらなければならないという条例を制定しており、現在では9割以上の人が立ち止まって乗るという実績を示している。同市がおこなった「右側に立ち止まって通せんぼする人」を有償で雇っての啓発活動を紹介する記事も大きな反響を呼び、SNSでは「そのバイトをぜひやりたい」「私はもう何カ月も前からタダでやっているのに」などと、名古屋市を羨む声も続出した。
暗黙のマナーが破られた瞬間
こうしたなかで私が現場で感じた「潮目の変化」とは、まず右側に立ち止まって乗っていても、文句や舌打ちなどの嫌がらせをする人が、まったくいなくなったことである。これは明らかな変化と言える。また私がいつもファーストペンギンとはかぎらず、すでに「立ち止まって2列」となっている場所が増えてきたのだ。
先日などは、エスカレーター歩行者に「立ち止まって乗れと書いてあるだろう」と口頭で注意している人も見た。すると注意された当人は驚いた様子で慌てて歩くのをやめ、その後ろにつながって歩行していた人たちも、無理にすり抜けようとはせず立ち止まったのである。
「立場の逆転」とは、まさにこのことだ。これまでは、立ち止まる人が歩行者に遠慮して道を空けるのがさも“正しいマナー”であるかのように思われてきたが、歩行者が“本当に正しいマナー”を前に、立ち止まったのである。私は歩行者が遠慮して立ち止まる光景を初めて目撃した。
今でもまだよく目にする「片側長蛇の列」を形作っている人のなかには、「自分は歩くつもりはないが、“歩く人用の側”に立ち止まる勇気まではない」という人たちが少なからずいるに違いない。