話を聞いてくれた駅係員からは「もちろん事故やトラブルが起きてからでは遅いですよね。ただ私では判断できないので上の者に伝えます」との返事をいただき、早速その翌日から「エスカレーターは歩かず立ち止まってご利用ください」といった構内放送が流された。
しかしそれは最初の数日間のみ。前回の記事でも述べたが、鉄道各社はなぜもっと本腰を入れて繰り返し音声アナウンスしようとしないのだろうか。誰に遠慮をしているのだろうか。ぜひその真意を確認したいものである。
首都圏では、条例のある埼玉県と都内を結ぶ路線を有するのは西武鉄道、東武鉄道、JR東日本、東京メトロが主であるが、これらは率先して全駅の構内だけでなく、電車を降りてすぐの行動変容に効果が期待できる車内放送でも、繰り返しアナウンスすべきだ。
空気に支配されやすい人は、簡単に行動が変わる
SNSではACジャパンがテレビCMで流すのも効果的ではないかとの意見も目にした。私も同感だ。社会意識の向上や行動変容の促進を役割とした公共広告団体なのだから、まさに適役ではないか。駅や車内でのアナウンスにくわえて、テレビやネット広告で何度も何度も繰り返し音声で印象づけることは、駅のポスターよりよっぽど効果的だろう。
そもそも片側空けは、「急ぐ人のために道を空ける」という“暗黙の了解”だと言われてきたが、それは職場に急ぐ人の多いラッシュ時の殺気だった「空気」におびえた人たちによる行動であって、けっして「急ぐ人に道を空けてあげよう」という親切心からのものではない。これが実相であることは、潮目の変化とともに噴き出してきた「片側空け反対論」の勢いからも裏付けられる。
空気に支配されやすい人たちは、空気が変わればその行動も応じて変える。同調圧力に屈しやすい人たちは、その圧力の種類が変わればすぐ新たな圧力に屈して従順となる。つまりこれらの人たちは、やり方しだいでは御しやすいのだ。