30代女性のリアルな姿を描いて高い評価を受けた『セイント・フランシス』(19)で、監督、脚本、主演を務めた2人が共同監督で作り上げた期待作『カーテンコールの灯(あかり)』がまもなく公開される。
建設現場で働く中年男性のダン(キース・カプフェラー)は、ある日、地元のアマチュア劇団を主宰するリタ(ドリー・デ・レオン)に誘われ、『ロミオとジュリエット』のロミオ役を演じることに。芸術とは縁がなく、感情を表に出すことが苦手なダンであったが、演劇を通して次第に変化していく。さらに、1年前に起きた悲劇的な事件によって壊れかけていた家族も再生され――。
シェイクスピアの戯曲と実人生をリンクさせた見事な脚本は、ケリー・オサリヴァンさんの手によるものだ。
「どうしたら批判や断罪なしに他者に共感できるのか、という思いから発想しました。私は俳優としての経験で、演じることとは役柄に共感することだと理解しています。そこで、演技を通して初めて他者への共感を体験するキャラクターを生み出しました。その人物ダンにとって、演技は恐怖であると同時に自分を解き放つもの。彼が家族に起きた悲劇を追体験する題材として、『ロミオとジュリエット』は完璧な物語でした」
そんな劇中劇の見どころを「年齢から外見まで、これまでの定型からかけ離れているところ」とオサリヴァンさんが言うと、彼女の私的パートナーで、共同監督のアレックス・トンプソンさんは、「それが実現したのは直感を信じたから」と補足する。「劇団員の役衣装は、実際に俳優たちに選んでもらいました。ドリーが自前のショートヘアのままジュリエットを演じたのも彼女自身の選択です」
即興性や直感性は、インディペンデント映画の強み。本作のキャストとスタッフの多くは彼らの長年の友人であり、撮影も彼らの拠点であるシカゴ周辺で行われた。つまり本作は、その内容も制作態勢も、地域密着型なのだ。
「私自身が小さなコミュニティ、地域劇団の出身なので、自然とそういう話になるんです」とオサリヴァンさん。一方、トンプソンさんは、「我々は自分たちが好む方法で映画を作りたいのです。そうしてできた本作が日本にも届くということは、これがメジャー作品に全く劣っていないことの証明だと思っています」と語る。
配給:AMGエンタテインメント
同じ家で生活し、息子を育て、一緒に映画を作る2人。「意見の不一致による議論や喧嘩はもちろんあります」「夫婦で共同監督というやり方を皆さんにもお勧めしたいかというと疑問ですね」と口々に言って笑う。「信頼し尊敬している相手の同意を得られないと、自分の意見がぐらついてしまうんです。そういうときは変に妥協せず、ストーリーをきちんと見直します。それが最善の策になりました」と、トンプソンさん。最後に、
「日本の皆さんにも笑って泣いて、最後にカタルシスを経験してほしいですね。そして地域社会や家族と、より繋がろうと思ってもらえたら。また願わくは、愛すべき我らがキースが、日本でもスターになりますように!」
Kelly O'sullivan/1984年生まれ、アメリカ、アーカンソー州出身。脚本家・監督・俳優として活躍。『セイント・フランシス』(2019)では、脚本と主演を務めている。
Alex Thompson/1990年生まれ、アメリカ、ケンタッキー州出身。脚本家・監督・プロデューサー。ローマ国際映画祭最優秀審査員賞を受賞した『Calumet』などいくつかの作品を手掛ける。長編初監督作『セイント・フランシス』は、2019年のSXSW映画祭でプレミア上映され、特別審査員賞と観客賞を受賞。数多くの映画賞で高い評価を獲得している。
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映画『カーテンコールの灯』
2024年/アメリカ/115分/原題:Ghostlight
6月27日全国順次公開
配給:AMGエンタテインメント
https://amg-e.co.jp/item/curtaincall/





