対向車も後続車もない仮設道路を川沿いに進む

 段からは線路と並行している県道158号線を進む。と、すぐに左側の線路が途切れ、そこから先に線路が延びていたはずの細い用地が舗装されている。

 そして、その線路の中断地点で県道は行き止まりとなっていて、元・線路の舗装区間に合流している。しばらく鉄道が復旧されないことを見越して、線路をいったん撤去して仮設道路に転用しているのである。

ここから先は線路用地が仮設道路として使用されている(段~坂本)

 対向車も後続車もない仮設道路を川沿いに進むと、まもなく宮松トンネルが現れる。レンガ造りの古びた鉄道トンネルは、明治時代末期の肥薩線開業当初とさほど様子が変わっていないと思われる。

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 単線用のトンネル内では対向車とのすれ違いができないので、トンネルの両側に自動車用の臨時信号機が設置され、時間差で相互通行ができるようになっている。

 書類上は現役の鉄道トンネルの中へと徐行しながら自動車で進入し、列車で通過したときには観察不可能なトンネル内をじっくり眺めながら通過する。

肥薩線宮松トンネルの八代側入口(段~坂本)
宮松トンネルの内部

折れ曲がったり宙づりになった線路、錆び付いた間からは木々が…

 ここから次の坂本までの一区間では、ほぼ並行する県道と線路上の仮設道路を行き来しながら、球磨川に沿って肥薩線の列車のごとく走る。カーナビの画面はずっと「探索中」のままで、自分の車が検索不能な線路の上を走行している事実を示している。

段~坂本間の仮設道路上で表示されるカーナビの画面。本来の道路ではないので、画面右側に最適ルートを「探索中」との文字が表示され続ける

 時折、道路の真横に被災して折れ曲がったり宙づりになった線路がそのまま放置されている痛々しい場面に出くわす。