ここ数年、春にJRがダイヤ改正をするたびに、JR北海道が利用客の少ない路線や駅を廃止するのが恒例行事のようになっている。今年の春は、路線の廃止こそ予定されていないが、全道で5つの駅が3月15日限りで営業を終了することが発表されている。
その一つ、根室本線の東根室駅は、単なる利用客が少ない無名の辺境駅ではなく、「日本最東端の駅」として知られている。東根室駅の廃止によって、日本最東端駅は1駅隣の終着駅・根室に移ることになる。
全国津々浦々に路線網が拡大されてきた日本の鉄道の東西南北の果ての一つが、内向きに縮小する形で変更されるわけだ。全国各地で赤字ローカル線の存廃に関する注目が高まる中で、日本の鉄道路線図全体のダウンサイジングを象徴するような印象さえ受ける。
東根室駅の3月廃止がJR北海道から正式に発表されたのは昨年12月13日。すでに厳しい冬が始まっていた東根室駅の姿を、さわやかな夏の季節に見ることはもうできない。
そこで、平成から令和にかけて計3回、夏の東根室駅を訪れたときの様子から、終焉まであとわずかとなったこの小さな日本最東端駅の在りし日を振りかえってみたい。
「最東端の終着駅」は西へ向かって線路が尽きる
東根室駅はその名の通り、根室本線の終着駅である根室駅の東南東に位置している。
根室本線が西から線路が延びてきたのに、終点の根室駅より東にあるのは、根室市街の南方から入ってきた線路が西向きにカーブしたところに根室駅があり、東根室駅はそのカーブの手前にあるからだ。
終点の根室駅では、釧路方面と反対側に延びる線路がホームから少し離れたところで途切れていて、「根室本線終点」という看板が立っていて最果て感を醸し出している。
だが、実はその線路は西へ向かった状態で尽きているのであって、その先に線路をまっすぐ延ばせば納沙布岬方面へ向かうわけではない。「日本最東端の終着駅」の線形としてはやや不思議な感じがする。
もっとも、終着駅としては日本最東端であることに違いはないから、列車からホームに降り立てば、「ここから先へはもう線路が無い」という旅情は自然と湧いてくる。