実は(少数ながら)いつも誰かしら乗降客がいた
根室から東根室へ向かう列車は、平成4年当時はディーゼルカー2両編成だったが、今では1両編成が原則となっている。過去3回の夏の乗車時のいずれも、根室発の朝の列車には観光客が乗っていて、列車そのものが閑散としているということはなかった。
1両編成には不釣り合いな長いホームを発車した上り列車は、東へ向かってしばらく直進する。その後、緩やかに右へカーブしていく途中で、早くも次の東根室駅の接近を知らせる黄色い標識が車窓左側を掠めていく。
小さな歩道橋の下をくぐり、再び線路が直線になると、もうその先に東根室駅の小さなプラットホームが見えてくる。屋根はなく、2両程度の車両がやっと収まる程度の板張りの片面ホーム。あまりにも素っ気ないが、ここが、日本で最も東の果てにある鉄道駅である。
平成4年の初乗車時はここから乗り込む地元の若者グループがいたし、平成29年の夏は自転車を持ち込む旅行者のほかに近隣住民らしい男性も乗ってきた。令和4年当時は東京から来た観光客の家族が降り立っただけで乗客はいなかったが、とにかく、毎回乗降客の姿には接していた。
「記念写真を撮ると、もうやることがない」
簡素なホームに降り立ち、ディーゼルカーが走り去るのを見送ってしまうと、屋根がなく駅員もいない東根室駅は、静寂と、広い空を見上げる開放感を独占できる空間へと転じる。
ホームには駅名標のそばに「日本最東端の駅」という白い立札が建っているだけで、その文字と一緒に記念写真を撮ると、もうやることがない。
ホームの下にも同じような記念碑が建っているが、その横に置かれている4人用のベンチも屋根がなく、雨や雪をしのぐ設備がホーム上にも駅前にも全くない。