駅前には土産物屋がオープンしており、英語や中国語での案内表記が掲示されている。最果ての鄙びた雰囲気は感じにくくなったが、「最南端の駅」という立地条件を、観光要素として上手に活用していることは間違いない。

西大山駅前。観光バスも発着できる駐車場がホーム前に整備されている 
4ヵ国語で表示された撮影上の注意事項を示す看板(西大山) 

 東根室駅では、そこまでの積極的な観光地化は行われていない。

 根室駅で東根室駅の記念入場券を販売したり記念スタンプを用意したりはしていたが、肝心の現地には「日本最東端の駅」の看板以外に何もない。西大山駅と違って静穏な住宅地に近いがゆえに、不特定多数の来訪者を想定する観光開発がしにくいという事情もあったのかもしれない。

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 もっともそのおかげで、簡素すぎるホームで最果ての寂寥感を味わいやすかったのも事実である。だからこそ東京からはるばるこの駅を3回も訪ねた自分自身の過去を振りかえれば、「もっとああすればよかった」などと言う資格がないことは自覚しているが……。

「日本最東端の駅」というブランドをどう活かすか

 3月に東根室駅が廃止されると、「日本最東端の駅」は終点の根室駅に移る。これまで、東根室駅があるせいで「日本最東端の有人駅」といった限定付きの「最東端駅」を名乗っていたが、これからは名実ともに日本最東端の駅となるわけだ。

根室駅改札口のドアにあった「日本最東端の駅」の表示(平成29年)。東根室駅があるのにフライングでは? 

 日本最北端の駅である稚内のように終着駅が最果て地点となることで、「日本最東端の駅」というブランドを活かした観光PRはしやすくなるはずだし、実際に「日本最東端の駅」で乗降することになる旅行者がこれまでより増えることにもなるだろう。

 日本の鉄道路線図がわずかながら縮んでしまうのは寂しいことだが、乗客の減少から路線ごと廃止されてしまってこれ以上東の果ての駅が西へ西へと縮んでいくことのないよう、東の最果て駅の適度な活性化を祈るばかりである。

写真=小牟田哲彦

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