この区間にある駅は、肥薩線内でも特に利用客が少ないということで、今年4月の復旧合意に際して、3駅が復旧されず廃止されることも決まった。球磨川第一橋梁に続く瀬戸石、海路の2駅がその廃止駅に含まれている。

 瀬戸石ダムの下流にある瀬戸石駅は、熊本豪雨によってホームも線路も待合室も、全て押し流されて壊滅した。

 カーナビには「瀬戸石駅」の表示が出るのだが、川越しに駅があった場所を見てみると、深い木々におおわれた斜面の真下に細長い資材置き場のような空間があるだけ。そこに、反対列車との行き違いもできる鉄道の駅があったと想像することは難しい。

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対岸から見た瀬戸石駅付近。画像中央の右半分あたりにホームがあった
瀬戸石駅の位置を示すカーナビの画面

 次の海路は川面の近くにホームが残っていて、駅名標の文字も対岸から読むことができた。だが、その先の区間では、斜面に投げ出されたかのような線路もドライブ中の視界に入る。私は中東の某国で戦乱によって破壊された国際鉄道の廃線跡を見たことがあるが、それに近い荒涼とした雰囲気が漂っている。

休止中の海路駅ホーム。このまま廃止される予定
「かいじ」の駅名標やホーム上の待合スペースが残っている

かつて「全ての特急列車が停車」した主要駅は、いま…

 7年前の特急「いさぶろう」が坂本の次に停車した一勝地は、運休前は全ての特急列車が停車する肥薩線内の主要駅だった。そのときは、熊本行きの特急「かわせみやませみ」が、私たちの「いさぶろう」とここで待ち合わせた。

一勝地駅構内
ほぼ同じ場所から撮影した平成30(2018)年当時の一勝地駅。向かいのホームに停車しているのは特急「かわせみやませみ」

「かわせみやませみ」の車両は「いさぶろう」とは別仕様で、当時の私は、こちらが到着するのとほぼ同時に一勝地を出て八代方面へ去っていく「かわせみやませみ」を見送りながら、「今度来たらあっちの列車に乗ってみようかな」などと思ったものである。