ニューヨーク市長は大統領と直接対峙することも
ニューヨーク市は830万人の人口を持つ全米最大の都市であり、アメリカの政治、社会、文化に大きな影響を及ぼす。市長は他都市の市長以上のパワーを持ち、時には大統領と直接対峙することもある。また、ニューヨーク市長の経験者は大統領選に出馬することも多い。
直近の元市長3人、ビル・デブラジオ(民主党)、マイケル・ブルームバーグ(共和党→無所属)、ルドルフ・ジュリアーニ(共和党)は、当選は果たせていないものの全員が大統領選出馬を表明したことがある。なお、早くも「マムダニを大統領に」とする声もあるが、マムダニは米国生まれでないことから大統領の資格を持たない。
こうした背景があるからこそ市長選に大統領さえもが口を挟み、かつ民主党の政治家もマムダニを公式に支持するか否かで大きく分かれている。
民主党プログレッシヴの急先鋒であるAOCことアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は、自身がニューヨーク市出身であることもあり、マムダニを熱心に応援している。マムダニのインスタグラムには2人のツーショットも登場する。AOCとともにプログレッシヴの波を推し進めているバーニー・サンダース上院議員もマムダニ支持者だ。
マムダニ、クオモに次いで予備選の得票数3位となったブラッド・ランダー(現NY市会計監査官)は市政におけるユダヤ系政治家の最高位にある。そのランダーが「イスラム教徒のニューヨーカーとユダヤ教徒のニューヨーカーを分断させない」と、マムダニと共同戦線を張っていた。本選でマムダニが当選した場合、ランダーは副市長となり、2人でイスラム教徒とユダヤ系の融和を図るのではないだろうか。
しかしユダヤ系として米国政界で最高位にあるチャック・シューマー上院院内総務、シューマーに次ぐ民主党リーダーと目されるハキーム・ジェフリーズ下院院内総務はともにニューヨーク出身だが、マムダニに当選の祝辞を送ったのみで、公式支持はしていない。
市長選本選はどうなるのか
11月4日に行われる市長選の本選は、非常に複雑な事態となりそうだ。
今のニューヨーク市で共和党の市長が誕生することは考えられず、今回、共和党からはカーティス・スリワ(ガーディアン・エンジェルズ設立者)のみが立候補しており、予備選なしで本選に進む。
民主党の予備選でマムダニに敗れたアンドリュー・クオモは元ニューヨーク州知事。コロナ禍初期に大打撃を受けたニューヨーク州を率い、当時、大統領第1期任期中だったトランプと丁々発止にやりあって不足していた人工呼吸器を調達するなどし、ニューヨーク州のみならず、全米にその名を馳せた。
その際に得た人気とそもそも野心家であることから、やがて大統領選に打って出ると言われたクオモだが、女性職員へのセクシュアルハラスメントが発覚し、知事を辞任した。今回の市長選立候補はクオモにとって政界復帰の第一歩となるはずだった。そのクオモは今、民主党から独立候補にスイッチして本選に出る可能性を探っている。



