マムダニの掲げる政策は?

 マムダニは民主党の中でも特に急進的な「プログレッシヴ」と呼ばれる派であり、かつ「民主社会主義者」(Democratic Socialist)を自称している。市長としての基本政策は全米で最も物価の高い都市の一つであるニューヨーク市を庶民が暮らしやすい街にすること。そのために賃貸アパートの家賃凍結、市バスと託児所の無償化、市営スーパーマーケットの開設などを公約としている。

 33歳と若く、かつラッパーとしての映像制作経験が豊富なことから、マムダニはこうしたメッセージをインスタグラムやTikTokで軽快かつ分かりやすく発信しており、これが若い有権者の獲得につながったと思われる。

TikTokなどを駆使してアピールするマムダニ

 しかし、こうした公共サービスの無償化政策は保守派、共和党の政策に真っ向から反するものだ。保守派メディア、フォックスニュースの人気キャスターであるローラ・イングラムスは、マムダニの政策が失敗すると断定している。

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「ニューヨーク市がマムダニのような社会主義者を選出したいなら、その代償を支払わせるべきです。市が破綻したとき、アメリカ(連邦政府)がそのツケを払うべきではありません」 

「車に爆弾を仕掛けた」という脅迫が

 イスラエル/パレスチナ(ガザ)問題は、ニューヨーク市の政治家にとって非常にデリケートな問題だ。ニューヨーク市は本国イスラエルに次ぐユダヤ系人口を持つが、ユダヤ系にはさまざまに異なる教派、およびイスラエルに対する考えがあり、一枚岩ではない。コロンビア大学やニューヨーク大学でのガザ虐殺への抗議デモには学生に混じってユダヤ系の教授も参加した。男性は全員が黒づくめの装束をする正統派ユダヤ教と呼ばれる教派は反シオニズムで知られる。

 その一方、ニューヨーク市には2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃時に人質となった人の親族が住んでいるという事実もある。そもそもユダヤ系へのヘイトクライムは以前より執拗にあり、イスラエルによるガザ攻撃後はそれが増加した。そこからユダヤ系市民による、反「反ユダヤ主義(Antisemitism)」を訴える声が高まった。

マムダニのインスタグラムより

 イスラエルがガザ攻撃を開始した際、マムダニはニューヨーク州議会議員としてネタニヤフ批判の声明を発している。しかしイスラム教徒であるマムダニを反ユダヤ主義者とそしる声があり、予備選の前週には何者かによって「車に爆弾を仕掛けた」という脅迫がなされている(マムダニは車を持っておらず、地下鉄と自転車を使用している)。