「君の言うとおり、今だけを見れば無謀な出資かもしれない。我々も三菱自がかつての栄光を取り戻すとは思っていない。しかし最終的に再建できなくても、今、我々がリスクを取ることで時間は稼げる。『三菱』の名前を背負った会社が突然、倒れて取引先や世間に迷惑をかけてはいかんのだ」

「それでも最後は倒れます」

「倒れるのが10年後ならそれは、三菱自が危ないと知りながらそれまで漫然と取引してきた会社や、転職しなかった従業員や、株を持ち続けていた投資家の自己責任ということになる。その時間を作るための投資。そう考えてはもらえないか」

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 あれから20年以上が経過した今も、三菱自は立派に存続している。「組織の三菱」の底力を見せつけられた気がする。足元の数字だけを見て青臭く「背任」と叫んでいた自らの見識の狭さを恥じ入るばかりだ。

三菱自動車再建を手掛けた三菱商事の古川洽次氏 Ⓒ時事通信社

※本記事の全文(約8300字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年7月号に掲載されています(大西康之「日本流『投資銀行』のたくましき男たち 商事・物産・伊藤忠の生き残り戦略」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・伊藤忠・中興の祖は瀬島龍三
・ブルーフィルムで接待
・「中国に潜入してくれ」
・GMとの提携
・伊藤忠とセブンイレブン
・コンビニ3強時代へ
・「組織の三菱」の底力
・「投資」に舵を切った総合商社

出典元

文藝春秋

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