歴史から読み解く勝負の行方
経済記者生活37年。合併、買収、倒産、内紛、粉飾。思えば、企業が関わる様々な場面に立ち会った。「あそこであの社長があれほどムキになったのは、あの会社にこんな歴史があるからだ」「あの社長とこの社長は実はめちゃくちゃ仲が悪い」「今でこそ隆々としているが、あそこを乗り切れなければこの会社は倒産していた」。見てはいけないものを含め、記者でなければ見られないシーンを随分見てきた。
そんなあれこれを見てきた私の頭の中には市販の『業界地図』とは全くの別物の『裏業界地図』がある。裏歴史を知れば、世界のビジネスシーンは100倍面白くなる。記念すべき第1回は「日本製鉄・USスチールvs.トランプ政権」。「米国に2兆3000億円投資します」と言っている日本製鉄を、ディール大好きのトランプ大統領がなぜ邪魔するのか。歴史を辿ると思わぬ真実が見えてくる。
米国第一主義を掲げるトランプ政権が再び、日本や日本企業に無理難題を押し付けてくるのでは、と日米の経済関係に暗雲が漂う中、その象徴となっているのが、日本製鉄のUSスチール買収問題だ。当事者同士は1年ほど前に合意しているのだが、バイデン政権が「安全保障上の問題がある」と阻止に動いた。大統領選でハリス氏がトランプ氏に敗れたため、状況は変わるかに思われたが、2024年12月2日、大統領就任を1カ月半後に控えたトランプ氏は自身のSNSでこう語った。
「私は買収計画を阻止する。買収者は注意することだ」
「かつて偉大で力強かったUSスチールが外国企業に買収されることには、私は完全に反対だ」
新大統領のお墨付きを得て増長しているのが、約1年前にUSスチールの買収戦で日本製鉄に競り負けた米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのローレンコ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)だ。同氏は1月13日の記者会見でこう叫んだ。
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source : 文藝春秋 2025年3月号