復活と凋落──何が運命を分けたのか?
■裏読み業界地図〈完結〉
第1回 日本製鉄に立ちはだかる鉄鋼王カーネギーの栄光
第2回 日産・ホンダはなぜ決裂したのか? 自動車野郎がいない日産エリート
第3回 ソニーとパナソニックの明暗 出井伸之がドイツで買った夢 今回
第4回 NECと半導体 「電電ファミリー」失敗の歴史
第5回 日本流「投資銀行」のたくましき男たち 商事・物産・伊藤忠の生き残り戦略
第6回 日本製鉄の正念場 海外レジェンド企業買収の黒歴史をひもとく
第7回 薄型ディスプレイの落日 JDIはなぜ「ゾンビ企業」になったのか?
第8回 アマゾン・ドコモ連合の勝算 楽天、ヤフーの牙城は崩れるのか?
第9回 トランプ関税対策は日米チョコ戦争に学べ
第10回 株価高騰 日本防衛産業の死角
第11回 日本のネットベンチャー30年の興亡
第12回 半導体立国・日本は復活するのか
4月1日、ソニーグループの新しいCEO(最高経営責任者)に十時裕樹(とときひろき)氏が就任した。十時氏は2023年に社長に就任し、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)として吉田憲一郎前CEOを支えてきた。吉田氏は代表権を持つ会長として留まるものの、7年ぶりにCEO権限を十時氏に集中させる。

1987年にソニーに入社した十時氏は「エレキの人」ではない。財務部やロンドン駐在を経てソニー銀行の立ち上げに携わり、インターネットプロバイダー、ソネットの経営を指揮した。
エレキを「本流」と考えるなら、ソニーの歴代CEOは初代の盛田昭夫氏以降はずっと「傍流」から輩出されている。1989年にCEOに就任した大賀典雄氏は元々バリトン歌手で、創業者の井深大氏、盛田氏に音響のアドバイスをしていた縁でソニーに入社した。1999年就任の出井伸之氏は欧州に長く籍を置いた営業マンで、社長になる前は広告宣伝本部長などを務めていた。2005年就任のハワード・ストリンガー氏は米3大ネットワークの一つCBSの放送部門社長からソニーに転じた「メディアの人」。2012年就任の平井一夫氏はCBS・ソニーに入社した「音楽の人」。2018年就任の吉田氏はソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)の社長も務めた「ネットの人」である。

こうして見ると、エレキのエンジニアだったソニー社長は、創業者の井深氏、盛田氏、その後を継いだ岩間和夫氏まで。その後は「非エレキ」の人材がトップに立っている。CBSレコードやコロンビア映画の買収を決めた創業者の盛田氏は、常々「コンテンツがなければ、どんなに優れた音響・映像機器もただの箱だ」と言っていた。その考えを実践すべく米国の大手レコード会社と映画会社を買ってしまうのだが、この頃からソニーは他の電機大手と一線を画している。
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