政府、日銀の責任から経済学者の罪まで、日本経済の深層を語り尽くす
藤原 安倍政権が発足して約三カ月ですが、日経平均株価はリーマンショック前の水準まで回復し、為替もドルに対し一〇%以上の円安となりました。まだ実質的なことが何もなされていない三月終わりにもかかわらず、アベノミクスの効果が目に見える形で現れています。この劇的な日本経済、少なくとも景況感の好転ぶりを見ていると、なぜ、十五年にもわたりデフレ不況に喘いでいたのかと感じざるを得ません。
今回は、アベノミクスの理論的支柱であり、現在、内閣官房参与である浜田先生に、日本経済の現状と行方について、お話をうかがいたいと思っています。いつ頃から、安倍晋三氏に経済政策を提言されるようになったのですか。
浜田 安倍さんと初めてお会いしたのは、〇一年から二年間ほど内閣府の経済社会総合研究所の所長を務めたときです。また〇九年、くしくも安倍総理の父、安倍晋太郎氏ゆかりの国際交流基金日米センターからの安倍フェローに応募し、一年間講義せず研究に専念することができました。フェローに選ばれたとき、ご挨拶したことも、晋三さんと経済政策の議論を深めるきっかけになったようです。
私は実は新田次郎さんのファンでしたし、また藤原さんの『若き数学者のアメリカ』を読むと、私もアメリカに三十年近く住んでいますが、同じように感じたり悩んだり喜んだりしたことが非常に生き生きと書かれている。アメリカ留学時代に、大学院生の寮から、金持ちの学生が週末に開くダンスパーティを見下ろしながら、藤原さんの本のようにもてたいなと思ったこともありました(笑)。
昨年、その藤原さんのコラムを読んでいて、驚きました。私の専門である経済政策にふれて、こんな風に書かれていたのです。
《しかし今もっとも責められるべきは、財務省や財界や政府と言うより日銀であろう。デフレ不況を十数年も放置してきた責任の大半は日銀にあるのだ。リーマン危機以来、アメリカは通貨供給量を三倍に増やすなど米英中韓その他主要国の中央銀行は猛然と紙幣を刷り景気を刺激した。日銀は微増させただけで静観を決めこんでいる。ここ三年間で円がドル、ユーロ、ウォンなどに対し三割から四割も高くなったのは主にこのせいだ。今すべきことは、日銀が数十兆円の札を刷り国債を買い、政府がその金で震災復興など公共投資を大々的に行い名目成長率を上げることだ。札が増えるから円安にもなる。工場の海外移転にも歯止めがかかる。ここ十四年間、経済的困窮による自殺者が毎年一万人も出ている。日銀は動かない》(『週刊新潮』二〇一二年二月十六日号)
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