■裏読み業界地図〈完結〉
第1回 日本製鉄に立ちはだかる鉄鋼王カーネギーの栄光
第2回 日産・ホンダはなぜ決裂したのか? 自動車野郎がいない日産エリート
第3回 ソニーとパナソニックの明暗 出井伸之がドイツで買った夢
第4回 NECと半導体 「電電ファミリー」失敗の歴史
第5回 日本流「投資銀行」のたくましき男たち 商事・物産・伊藤忠の生き残り戦略
第6回 日本製鉄の正念場 海外レジェンド企業買収の黒歴史をひもとく
第7回 薄型ディスプレイの落日 JDIはなぜ「ゾンビ企業」になったのか?
第8回 アマゾン・ドコモ連合の勝算 楽天、ヤフーの牙城は崩れるのか?
第9回 トランプ関税対策は日米チョコ戦争に学べ 今回
第10回 株価高騰 日本防衛産業の死角
第11回 日本のネットベンチャー30年の興亡
第12回 半導体立国・日本は復活するのか
日本の産業界が「トランプ関税」に揺さぶられている。当初27.5%とされていた乗用車の輸入関税は15%に落ち着いたが、それでもトヨタ自動車をはじめとする日本の自動車メーカーの負担は重い。「泣く子と地頭には勝てない」に倣えば、グローバル・サプライチェーンに組み込まれた企業は「関税と為替には勝てない」。特に国境を跨ぐだけで無条件に徴収される「関税」は、企業の努力や実力に関係なく競争力を変えてしまう。ある種の「暴力」とも言える理不尽な仕打ちに企業はどう対抗すればいいのか。36年前のある業界に大きなヒントがある。関税によるネガティブ・インパクトを見事撥ね除けたケースがあるのだ。
関税半減の衝撃
1989年、日本のチョコレート業界は騒然としていた。前年、日本のチョコレートの輸入関税が20%から10%に引き下げられたからだ。チョコレートだけでなく、あらゆる製品において日本は、今の「トランプ関税」も顔負けの30〜40%という高い関税を輸入品に課し、国内産業を守ってきた。
戦後の復興期には国際的に「やむなし」と看過されてきた日本の高関税だが、1970年代後半、高度経済成長を成し遂げた日本が経済大国の仲間入りを果たすと、「さすがに、それはおかしいだろう」と、日本の主な輸出先である米国とEC(ヨーロッパ共同体)が圧力をかけてきた。
輸出で荒稼ぎをしていた自動車は、1978年に完成車と部品の輸入関税が撤廃され、完全自由化となり、「米国のビッグ3(ゼネラル・モーターズ=GM、フォードモーター、クライスラー)に蹂躙される」と大騒ぎになった。しかしその他の製品の高関税はそのままになっており、米国、ECから特にせっつかれたのが「チョコレート(33.8%)、ビスケット(38.5%)、スコッチウイスキー(リットル当たりの従量課税方式だったが、ならすと37%)」の3点セットだ。
海外旅行のお土産でチョコレートやウイスキーが喜ばれたのは、高関税ゆえに日本国内では「高嶺の花」だったからだ。
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source : 文藝春秋 2025年12月号 トランプ関税対策は日米チョコ戦争に学べ

