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港の存続にも一役買った“可動橋”
橋が架かる手結港を眺めていると、年季の入った美しい石積みが気になった。
近くの案内板には、1657年に竣工した堀湊(ほりみなと)で、石積みが往時を偲ばせる、と書かれている。今から360年以上前に竣工していたとは、想像をはるかに上回る歴史の深い石積みだった。
ちなみに堀湊とは、河口付近の地面を掘って海水を引き込み、人工的に造られる港のこと。
現在では掘り込み港と呼ばれ、外海の高い波の影響を受けにくいという利点がある。案内板には、夏の暴浪を防ぐことができる土佐藩屈指の良港であったとも記されていた。
さらに調べてみると、手結港は日本初の本格的な掘り込み港で、江戸時代初期のものとしては最大級の規模だという。橋にも驚いたが、手結港の歴史にも驚いた。
そして、その港が今も現役で使われ続けていることが嬉しかった。橋の外洋側にも、国体が行われた2002年に港が新たに整備された。港の機能をそちらに集約すれば、内側の港を使う必要がなくなる。そうすれば橋を可動橋にすることもなく、車や人が常時通行できるし、建設費も安く済むが、そうはしなかった。
文化財や産業遺産が保存されることも重要だが、実際に生活の一部として使われ続けていることに、とても大きな意義を感じる。固定された橋ではなく可動橋として建設されたことで、港も存続できたといえるのではないだろうか。




