「なんだか人生止めたくなる」

05年2月16日水曜日 曇りのち小雨

 10時、帝国ホテルにて、日枝、村上〔光一フジテレビ社長〕、住田〔良能(ながよし)産経新聞社長〕&カメの会談。

「今は、戦場である。イラクのファルージャである」「貸し株の件を早く取締役会で決議しろ……」とか、いろいろ、がんがんつるし上げみたいな状況である。なんだか人生止めたくなる。

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 社に戻ると取締役会。お昼開始、どうにも汗が出て気分も良くない。

 嫌な感じである。

 とにかく耐えて頑張らなくては……である。

 僕は議決権ないので門外漢となる。

日枝久氏 ©文藝春秋

 本日の議案は「フジがLFに対するTOBを51%以上100%から、25%以上100%に決議したが、これを承認するか」というものである。

 久保利〔英明LF社外取締役〕先生が反対意見を述べる。ごもっともなご意見ではあるが、そうもいかないのです。

元ニッポン放送社長の亀渕昭信氏。騒動の内幕を綴った「カメ社長の買収防衛日記」を文藝春秋で短期集中連載した

 野中〔ともよLF社外取締役〕、稲葉〔昭典同取締役〕役員も反対する。とにかく疲れてきました。

 なんとか多数決で押し切る形となる。野中さんが「命懸けるほどのことはない……」と言ってくれる。

 羽佐間さん、川内さんも事ここに至ってはお手上げの様子である。

 川内さんがしきりに「家に帰って休め……」というが、これまたそうもいかないのです。

 なんだかなあ……経営者は孤独です。

 久保利さんが「25〜100」は株主の利益を毀損する、と言い出したのは、フジテレビがそこまで防衛ラインを下げると、TOBは盛り上がらず、株価が上がらないので、株主にとっては、ありがたくない状況になる、と考えたからでしょう。

 フジサンケイグループ内で私らニッポン放送はフルボッコ状態でした。この日ついにフジテレビのニッポン放送に対するTOBの目標保有株式比率を50%から25%に引き下げることが正式決定されました。

カメ社長の買収防衛日記|亀渕昭信
前編 ライブドア事件20年「当時の日記を初めて公開します」
中編 日枝さんのおっかない顔
後編 ニッポン放送を救った日枝さんとの約束

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】小泉進次郎 玉木雄一郎 若き政治家のコメ対決/羽生結弦ほか つながらない新生活様式/菊地功 コンクラーヴェ体験記

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