ニッポン放送を救った日枝さんとの約束 カメ社長の買収防衛日記 後編

ライブドアvs.ニッポン放送vs.フジテレビ

亀渕 昭信 元ニッポン放送社長
岸川 真 作家
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フジテレビへの必死の説得が道を開いた

2005年3月26日土曜日 晴れ

 とっても良い天気の土曜日、もうすぐ桜も咲きそうだというのに、もう、悩みまくっている自分が悲しい。「外は晴れても心は闇じゃ」である。でも、現実は現実、この状況を直視しなければならないのだ。今日は午後1時から中村〔直人LF顧問弁護士〕(〔 〕内は編集部注、以下同)弁護士事務所で作戦会議である。妻が11時過ぎ、「ドレミの会」出席のため外出。僕の方は、12時、迎えの車に乗って大手町へ行く。中村先生と松山先生。こちらは、天井〔邦夫〕副社長、磯原〔裕〕専務、佐々木〔博志〕常務、大沼〔渉〕局長。難問山積である。今後の方針、大きな道筋を決めなければならない。ポニーキャニオン問題、来期の予算、中間決算の見通しなどなど、そしていよいよあっという間に迫ってくる、株主総会。とにかく、いろんな人からいろいろ言われようとも、自分は自分、「立つ鳥跡を濁さず」でやりたいものです。


 こんにちは、亀渕です。05年2月8日にライブドア(LD)が早朝の時間外取引で、ニッポン放送(LF)株の約30%を買ったことで、ライブドアとフジテレビ(CX)によるニッポン放送の買収合戦が本格的に始まりました。その攻防の詳細は前回を読んでいただくとして、3月24日にニッポン放送が保有する13.88%のフジテレビ株を北尾吉孝社長が率いるソフトバンク・インベストメント(SBI)に貸すことが正式決定されたことで、ライブドア対フジテレビの勝負の潮目が変わりました。ニッポン放送が持つフジ株はこれでゼロになり、ニッポン放送を通じて、フジテレビの経営に参画する、というライブドアの目論見は潰えたからです。

 フジテレビはホッと一息ついたでしょうが、ニッポン放送の社長を務めていた私にとっては、ここで戦いをやめるわけにはいきません。「TOB(株式公開買い付け)によって、フジテレビがニッポン放送株を100%取得し、完全子会社化する」という、フジテレビ会長(当時)の日枝久さんと04年12月に鰻屋で交わした約束が果たされていなかったからです。

 3月25日時点のニッポン放送株の状況を客観的に振り返ると、ライブドアは3月7日時点の42%からじりじりと買い増し、保有比率は50%を超えていました。それに対して、フジテレビの保有比率は36%超。このままフジテレビがライブドアと手打ちをして、ニッポン放送がライブドアの子会社になり、フジサンケイグループ(FCG)から切り離されることも十分考えられました。それは絶対に阻止して、ニッポン放送をFCGに留めなければならない。それで「外は晴れても心は闇じゃ」という慨嘆を日記に書きつけてしまったのです。

追い詰められていたライブドア

05年3月27日日曜日 晴れ

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source : 文藝春秋 2025年8月号

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