ライブドアとの息詰まる攻防
どうも、亀渕です。前回は2005年2月8日にホリエモン(堀江貴文氏)率いるライブドア(LD)が時間外取引でニッポン放送(LF)の約30%の株を買い占めたところまで話しました。実は2月8日の数日前から株価が妙な動きをしていました。ニッポン放送のTOB(株式公開買い付け)を行って、ニッポン放送を子会社化しようとしていたフジテレビ(CX)の日枝久会長と、ニッポン放送の社長を務めていた私は「誰でしょうね? 敵対的TOBがあるかもしれませんね」と心配していたのですが、まさかライブドアが、しかも「時間外取引」で株を一気に買うとは予想していませんでしたので、大いに慌てました。

これを受けて、フジテレビの日枝さんは、ニッポン放送を100%子会社化するという、私との鰻屋での約束をすぐに反故にして、TOBの取得目標株数を50%〜100%から25%〜100%にすると2月10日に発表しました。50%という数字は、ニッポン放送子会社化のためには譲れないラインです。50%の株を取得すれば、株主総会で過半数を押さえられ、フジテレビはニッポン放送の経営権を実質的に守れるからです。
では、なぜ日枝さんは絶対防衛ラインを25%にまで引き下げたのか?
その理由は会社法にあります。会社法には、A社とB社が株を互いに持ち合っている時にA社がB社の株の25%以上を保有した場合は、B社がA社に対して持っている議決権は無効になる、という規定があるんです。2月8日時点で、ニッポン放送はフジテレビ株を22.5%保有していましたが、フジテレビがニッポン放送株を25%持てば、ニッポン放送がフジに対して持っている議決権は消滅します。つまり、ニッポン放送を経由してフジの経営に口を出すことはできなくなる。ホリエモンの最大の狙いはニッポン放送を買収することでフジの経営権を握ることでしたから、25%ラインを死守すれば、その目論見を阻止できるわけです。フジテレビの日枝さんからすれば、自分が経営する企業を守るための当然の防衛ライン変更なんですが、ニッポン放送を預かる私からすれば、「コノヤロー」です。
25%ではダメな理由
日枝さんは2月10日に自宅前に集まった記者に対して、「ニッポン放送の子会社化の目標は下ろさない」と言ってくれましたけど、25%という防衛ラインで実際に守れるのはフジテレビだけで、ニッポン放送は守れません。
フジテレビがニッポン放送株25%を取得できたとしても、ライブドアに50%以上買われてしまえば、ライブドアの子会社になってしまう。そうなればフジサンケイグループ(FCG)からは切り離され、フジテレビやFCGへの影響力を失ったニッポン放送には誰も助けの手を差し延べないでしょう。ニッポン放送は孤立無援で経営難の小さなラジオ局になってしまって、これまでFCGの中で作り上げてきたニッポン放送の文化は失われ、大勢の社員は路頭に迷う。私はラジオとニッポン放送、FCGを愛するサラリーマン社長として、それだけは絶対に避けなければならないと思っていました。
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