被害者が語る「詐欺の手口」
今は日本に住み、埼玉県の企業で働くタイ人女性のSasameさん(仮名)も、Messengerで詐欺被害を受けた一人だ。日本のポップマート店舗でラブブを買おうと列に並んでいたものの、中国人グループに割り込まれて買えなかったことに落ち込み、やむを得ずラブブを譲り受けることに決めたというが…。
「私の探していたラブブを譲ってくれる方をFacebookで見つけたので、その方にメッセージを送ると、すぐに『タイ国内の銀行口座に振り込んで欲しい』という連絡があって、1119バーツ(約4934円)を振り込みました。でも、その後はなかなか連絡がなく…。よくよく調べると、やり取りしていた相手が同じようなことを繰り返している詐欺師だと分かりました」
彼女に限らず、タイ国内ではラブブ人気に便乗した犯罪がかなり横行しているという。平均月収が日本円で10万円ほどとされるタイ人にとって、ラブブは値の張るアイテムだが、熱狂的なファンにとっては「詐欺のリスクを負ってでも欲しい」と思えてしまうほどの愛くるしい存在なのかもしれない。
迷惑すぎる“爆買い転売ヤー”が日本に上陸
これまでアジア圏が中心だったラブブ・ポップマートの人気は、欧米にも広がりつつある。ラブブ争奪戦の過激さが増すにつれ、問題も起きている。この5月には、英国ロンドンの店舗でラブブを買い求める顧客による喧嘩が相次ぎ、店頭での販売を停止する事態に発展した。
日本でも2024年末に「Yahoo!検索大賞2024 ネクストブレイク商品部門」にラブブが選出され、春ごろからニュースなどで見る機会も増えてきた。国内でも注目を集める中で懸念されるのが、やはり大量の商品買い占めや、高額転売といったトラブルだ。実は国内でも、2024年ごろからひそかに問題化していた。
新製品の発売日になると、都内の繁華街にある店舗の前には早朝から大きな袋を抱えた人による長蛇の列ができることがほとんど。筆者が訪れた日には、中国や東南アジア系の人が9割以上を占め、さまざまな言語が聞かれるその光景は、まるで海外にいるかのようだ。話を聞くと、日本在住の外国人が自国で買えない家族や友人のために代理で“爆買い”するケースも見られるが、転売の収益を得ようとする者も少なくない。
店側もラブブなどの人気商品を発売する際には、整理券の配布や購入時に身分証の提示を求めるといった対策を行っているが、混雑した店内では、抽選販売のことを知らない外国人が「自分だけが売ってもらえない」と激怒し、店員を激しくまくしたてる場面も見られた。混沌とする店内を見ると、文化の異なる顧客に対し、ルールを訴えることの難しさを感じずにはいられなかった。
ここ数カ月間で、ラブブ人気に乗じて転売を目論む日本人の転売ヤーも増加傾向にある。春先までは穏やかだった、LINE上のポップマートファンのコミュニティも、殺伐とした雰囲気が漂い始めている。中には「欲しけりゃその分努力する! これは当たり前のことだと思っています」「努力できない人間はラブブを愛せない」など、転売を正当化するユーザーも目立つ。外国人の爆買いだけでなく、日本人まで巻き込み始めたポップさのカケラもない“ラブブ狂騒曲”は、どこまで続くのか。



