「中国らしさ」を微塵も感じさせないつくりと巧みな戦略

 理由の一つとして、ラブブを始めとする多くの人気アイテムを中身の見えない“ブラインド形式”で販売している点が挙げられる。

 日本のカプセルトイに似た販売方式は、ユーザーにとって「何が当たるか分からない」というドキドキ感や好奇心、そしてコレクション意欲を高めることにつながる。商品の中には色違いのシークレットもあり、ただでさえ入手が難しいアイテム群の希少性をさらに高めている。

 さらに特筆すべきなのは、ラブブをはじめとする自社保有のIPに加えて『鬼滅の刃』『クレヨンしんちゃん』、さらにディズニーといった日本でも人気の高い他社IPを使って商品を展開している点だ。既に多くのファンを抱えるIPをラインアップに加えることで、収益は安定しやすくなり、かつ接点拡大によって自社IPの認知拡大や魅力に触れてもらう動線作りに成功している。

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 SNSを使ったマーケティング戦略も、ポップマートの強みだろう。ラブブの火付け役となったBLACKPINKのLISAや、元サッカー選手のデビッド・ベッカムなどのセレブリティが、ポップマートのアイテムを愛用していることを知ったファンが、こぞって買い求めるようになり、人気が加速していった。

 かつて「中国製」と聞くと、品質面の不安を感じる人も多かったはず。今でもその国名を聞くだけでアレルギーを示したり、下に見たりする向きも一部に見られるが、ポップマートの製品は細部に至るまで丁寧に作りが施されており、カラフルな色使いも印象的で「中国らしさ」はあまり感じない。数々の人気キャラクターを模倣し、嘲笑されたかつての姿を微塵も感じさせない製品に仕上がっている。

Facebook・Messengerが転売や詐欺の温床に…

 ブームの火付け役でもあるBLACKPINK・LISAの母国タイでは、2024年の春頃から国民的スターに憧れる層を中心にラブブが爆発的な人気となっている。同7月には、ラブブがタイ国政府観光庁(TAT)の「アメージング・タイランド・エクスペリエンス・エクスプローラー」に任命された。この称号が特定のキャラクターに与えられたのは、初である。同時期にタイ限定のラブブ(1000バーツ=約4650円)の発売も決定し、ラブブ人気にあやかって、中国を始めとする海外からの観光客誘致の役割を担っているという。

 ラブブが大ブレイクする裏で日に日に深刻化しているのが、転売や品質の劣る模倣品の販売、さらには多発する詐欺被害だ。

 例えば、タイでは日本のようなオークションサイトを使った個人間の取引売買が主流ではないため、商品の取引にはFacebookのMessengerを用いることが多い。ただ、もともとが商取引用のプラットフォームではないことから、安心した取引やトラブルが起きた場合の補償を受けられるような仕組みがなく、さまざまな犯罪の温床になっている。