「手抜き工事」「途絶えた高架橋」…相次いだトラブル
トンネル工事の手抜きで地上部が陥没、無人のクルマがトンネル構内に転落する事故も発生。幸いにして人的被害はなかったものの、数カ月前にも陥没事故が起きていたため住民の態度が硬化し、工事の遅延と止水材の再注入や賠償などでどんどん費用が膨らんだ。
これで終わりではなく「買収できなかった土地の高架橋が数メートル途絶えたまま」「運転士や職員まで雇い入れたのに開業延期」という事態まで発生し、開業後の支払いを減らすために、購入車両の中古への切り替えなどの経費削減も実施したが、もはや手遅れであった。
こうして見ると、この頃はほぼペーパー会社であった東葉高速鉄道に責任はない。しかし、鉄建公団のP線というシステムは「ほぼ言い値」であるが故に、建設費用=債務が際限なく膨らむ。東葉高速鉄道以外にも費用の高騰でのちのち苦しんだ鉄道会社は数多く、「欠陥制度」と言ってもいいだろう。
高すぎる運賃で企業が定期代の支払いに難色を示したことも
1996年、東葉高速鉄道はようやく開業。全国有数の混雑路線として知られる東京メトロ・東西線への乗り入れも同時に開始し、船橋市や都内への通勤・通学で手堅い収入を得て、建設費用=債務を返済へ——と青写真を描いたが、初年度の利用者数は想定の半分以下(14.5万人)で、単年赤字は130億円。その後も、返済どころか累積損失が膨らみ続けた。
利用者が低迷した理由は「全線16.2キロで610円(開業当時。現在は640円)」という、債務の返済を上乗せした高額すぎる運賃だ。通勤定期があまりにも高額なことで、企業が交通費の支払いを渋り、開業前の京成経由に戻させるようなケースもあったという。
沿線人口の増加や低金利時代も味方して、2010年頃から安定して利益を出せるようになったが2948億円という長期債務の利子は年間で50億~100億円近くかかり、増収分を吹き飛ばしてしまう。今後は「少子高齢化」「車両・設備の更新」「金利上昇」などのリスクが迫り、東葉高速鉄道は依然として値下げに慎重な姿勢を崩していない。というより、もはや鉄道会社が単独で値下げを決断できるような話ではないだろう。
高額運賃を値下げする方法はあるのか
東葉高速鉄道の沿線人口は、現在おおよそ25万人とされる。周辺の宅地化は勢いがあり、八千代緑が丘駅周辺などでは6学年で全36クラスを抱えるマンモス小学校もある。住民は、間違いなく値下げを望んでいるはずだが、本当にできないのか。
いや、方法はいくつかある。

