たとえば、自分の背中にホクロがあるかどうかを把握している人は、どれくらいいるでしょうか。気づく機会も、誰かに言われない限りなかなかありません。それほどまでに、背中は意識の外に置かれがちです。

しかし実際には、そこにこそ老化の兆候が表れます。背中が丸くなる、背骨が硬くなる、伸ばせなくなる、そして姿勢が崩れていくと腹部が押されてくる、呼吸が浅くなる──こうした変化は、鏡にも映らず、自覚症状も乏しいため、多くの人が見過ごしてしまいます。

私の臨床経験から強く感じるのは、「背中への意識が高い人ほど、健康寿命が長く、老け方が上手である」ということです。自分の背中に関心を持ち、日々の姿勢や筋肉の使い方を丁寧に整えていく。そうした習慣の積み重ねこそが、健康的に年齢を重ねるためのカギとなります。

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「姿勢写真」を撮ってもらうことが大切

おすすめしたいのが、家族や友人に「横からスマホで姿勢写真を撮ってもらう」ことです。

定期的に記録を残せば、背中の傾きや丸まりの進行を“見える化”できます。「今はまだ大丈夫」ではなく、「今こそ備えるべき時」という意識が自然と芽生えてくるはずです。

さらに、「最近背中が丸くなってきたよ」といった家族や友人からの声かけは、本人にとって貴重な“アラート”になります。他人の目で気づける変化は、時に本人以上に的確です。遠慮なく言い合える関係を築くことも、健康長寿を支える力になります。

「忙しくて運動の時間が取れない」「運動は苦手」という方でも心配いりません。大切なのは、無理なくお手軽に毎日数分でも継続することです。

私が提唱している「老い出し体操」は、脊椎外科医としての経験と知見をもとに考案した、背骨の健康を保つためのエクササイズ集です。すべて1分程度で行える動作ばかりです。ここでは、特に簡単に無理なくできる効果的な老い出し体操を3つ厳選してご紹介します。

・寝バンザイ体操──お腹と背中を伸ばす