・椅子でおなか伸ばし体操──お腹を伸ばす

・壁ピタ背筋伸ばし体操──背筋を伸ばして抗重力筋を鍛える

「数十秒」ではなく「しっかり1分」が重要

どのストレッチも、1分を目安に行ってください。「1分間正しい姿勢を取る」ことで、脳がその姿勢を“正しいもの”として学習することを促し、擦り込んでいくことで良い効果が出るのではと思っています。

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65歳以上の方においては、数十秒では不十分という研究報告もあります。ストレッチと同時に姿勢を保持する筋力をアップする効果を狙っていますので、じっくり時間をかけることで効率的に活性化されるものと期待します。

背中の筋肉や椎間板、骨は、使わなければ衰えます。しかし逆にいえば、日常の中でほんの数分、背筋を意識的に伸ばすだけでも、抗重力筋に刺激が入り、背中の寿命を延ばす第一歩となります。

その小さな積み重ねが、やがて「転倒予防」や「寝たきり予防」につながるのです。

つまり、「今日、数分背筋を伸ばすかどうか」が、10年後の自分の健康を左右する可能性があるという事実を、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。

「背中チェック」も健康診断に加えるべき

私が日々の診療で痛感しているのは、「背骨の老化に対する自覚があまりにも乏しい」ということです。血圧や血糖、コレステロールといった数値は、健康診断でチェックするのが当たり前になっていますが、背骨や姿勢の状態については、ほとんどの方が意識を向けていません。

しかし、背骨の健康は“見えない健康寿命”を支える柱です。だからこそ、私は健康診断の項目に「姿勢チェック」や「背骨の弯曲度測定」を加えるべきだと考えています。

たとえば、身長を測るときに壁に背中をつけて立ち、後頭部がどれだけ壁から離れているかを測定する。たった数センチの差でも、それが「背中の丸まり」の兆候かもしれません。毎年記録を取り、以前の自分と比較するだけで、大きな気づきが得られるはずです。