そうできるのが理想なのですが、実際にどのくらいの人がピンピンコロリで亡くなっているかというと、約5%、20人に1人しかいないのです。これは2011年の厚生労働省の中央社会保険医療協議会での「急死率が5%」というデータに基づいたものなので、ちょっと大げさな数字かもしれません。

しかし、ほとんどの人が亡くなるまでに何かしらの介護を受けているのは、疑いようのない事実であり、その期間は決して短くありません。

寝たきり期間が長い、日本の高齢者

それを示しているのが、厚生労働省が発表している健康寿命と平均寿命の差です。健康寿命とは、誰かに頼ることなく、心身ともに自立して健康的に生活できる期間のことで、2022年の発表では男性が72.57歳、女性は75.45歳です。

ADVERTISEMENT

これに対し、平均寿命とはあと何年生きられるかという期待値であり、0歳における平均余命、生まれてから亡くなるまでの時間を示しています。当たり前のことですが、健康寿命よりは長く、2024年の発表では男性が81.09歳、女性は87.14歳となっています。平均寿命から健康寿命を引いた年数が、自立できていない期間(介護が必要な期間)です。つまり、男性は8.52年、女性は11.69年、何かしら介護を受けて亡くなるということになります。

これは平均ですから、もっと短い人もいればもっと長い人もいます。日本は世界的にも長寿の国といわれていますが、健康寿命と平均寿命の差が大きく、介護の必要な年数が長いことが問題視されています。長生きしたいけれど、介護される期間はできるだけ短くしたい、そう願うのであれば、どう生きるか、どう死にたいのかをふだんから考えることが大切だと、多くの患者さんを看取ってきて感じています。

★日本人は寝たきり(要介護)の期間が長いといわれています

どう死ぬかを考える“QOD(死の質)”とは?

QOD(クオリティ・オブ・デス/死の質)という言葉があります。