もちろん、病院では医師や看護師が常にそばにいて、必要な医療処置をすぐに受けることができます。家族への負担も少なく、容体が急変したとしても安心してまかせるとができるでしょう。

ただ、その一方で、面会時間が限られているので好きなときに会いたい人と会えない、住み慣れた自宅と違って病室ではくつろげない、不安や孤独を感じやすいなどといったデメリットもあります。さらに、先ほど紹介したように、過剰な治療のため、最期につらい思いをするかもしれません。

私は死期が迫ったときには、過剰な医療は必要ないと考えています。日本の社会が変化したにもかかわらず、70年代と同じように病院では「亡くなるまで治す医療」が行われているのは、あるべき医療の姿なのか、考え直す時期がきたと感じています。死期が迫ったとき、どのような医療を受けるのかということは、QODを大きく左右します。医療従事者だけでなく、患者さんや家族も向き合い、考える時代になってきたと私は考えます。

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★病院での死にはデメリットもあります

永井 康徳(ながい・やすのり)
医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック医師
愛媛県の僻地診療所勤務ののち、2000年に愛媛県松山市で、四国で初めての在宅医療専門のたんぽぽクリニックを開業。「理念」と「システム」と「人材」のすべてを高いレベルで維持して在宅医療の質を高めることをめざし、現在は常勤医10人、職員100人の多職種チームで在宅医療を主体に、有床診療所、外来の運営も行っている。平成22年には市町村合併の余波で廃止となった人口約1200人の町の国保へき地診療所を民営化し、開設4カ月で黒字化を達成。そのへき地医療への取り組みは平成28年に第1回日本サービス大賞地方創生大臣賞を受賞。全国各地での講演を行い、「全国在宅医療テスト」や「今すぐ役立つ在宅医療未来道場(通称いまみら)」「流石カフェ」など在宅医療の普及のためのさまざまな取り組みを行っている。コロナ禍で現地講演会が難しくなってからは、YouTubeで「たんぽぽ先生の在宅医療チャンネル」を開始している。
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