2月20日公開の劇映画『痛くない死に方』(高橋伴明監督)の原作となった、2冊の書籍『痛い在宅医』と『痛くない死に方』(ともに、ブックマン社)を書いた、在宅医療のスペシャリスト長尾和宏医師。
その映画化のきっかけや、映画の裏話、さらに在宅医療やご自身について、お時間をいただき、長尾先生からお話をうかがった(インタビュー時期は2020年12月)。(全2回の2回目/前編を読む)
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『痛くない死に方』映画化のはじまり
――今回、長尾先生の著書『痛い在宅医』と『痛くない死に方』という2冊の書籍が、劇映画『痛くない死に方』になりました。この映画化のきっかけは?
長尾和宏医師(以下「長尾」) 突然、原作本を読んでくださった高橋伴明監督から「映画化したい」と仰っていただいて。もう夢みたいな話だな、と思いました。
監督の高橋伴明さんと初めて会ったのは、もう2年前かな。築地本願寺で「平穏死」の講演をした日で、監督にも1時間ちょっとぼくの講演を聞いていただいて。そのあと食事をしながらお話をしました。有名な高橋伴明さんに監督をして頂くなんて「ほんまかいな?」と思ったんですけど、トントン拍子で話が進んで、脚本まで書いていただいて。
キャストも豪華でね。去年、夏休みをもらって、ぼくも9割方、撮影に立ち会いました。映画の監修というのは今回が初めての経験でした。
監修を通じて、出演者と交流「熱心で嬉しかった」
――俳優さんへ細かく指導なさったのですか?
長尾 役者さんはいろんなことを質問してくださるので、聞かれたら言うようにしてました。訪問看護師役の余貴美子さんはかなり勉強熱心な方なので、こうするんですか? ああするんですか? と具体的に聞いていただいて、嬉しかったですね。大谷直子さんにも、坂井真紀さんにも、宇崎竜童さんにも、いろいろ質問をしていただいて。もちろん主演でお医者さん役の柄本佑さんにも。
佑さんはうちのクリニックに来てくれたこともありました。2人きりで在宅患者さんのお宅を朝から数軒、一緒に回ったんですよ。その日、まだ30代か40代の末期がんで、今日明日がヤマ、という患者さんを訪ねたときも、じっと見守っていてね……。
ドラマとか映画での終末期はたいてい美しいじゃないですか、でも実際の医療現場は生身の人間なんで、ドロドロしたもの。ぼくらの日常は、ほんまもんですから。だから今回の映画、劇映画とドキュメンタリー、両方を観ていただけるといいですね。
劇映画で下元史朗さん演じる1人目の患者さんも、ドキュメンタリーで追う患者さんの1人も、肺がんでCOPD(慢性閉塞性肺疾患。呼吸が困難となり息が吐き出せなくなる)になるというのが、たまたま同じパターンでした。それだけに劇映画とドキュメンタリー、見比べたらいろんな思いや感想が出てくると思うんです。だからぜひ、どちらも観ていただきたいんですよ。