介護を受けることなく元気に長生きしてピンピンコロリであの世へ。そんな理想を持つ人は多いが、実現するのは20人に1人(約5%)だけ。愛媛県松山市にある在宅医療を専門とする「たんぽぽクリニック」の医師・永井康徳さんは「現役時代からどう生きるか、どう死にたいのかをふだんから考えることが大切だと」という――。
※本稿は、永井康徳『後悔しないお別れのために33の大切なこと』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
“死”は未知のもの知らないから怖いと感じる
人の死亡率は100%と伝えました。人は必ず死にます。それは自然の摂理であり、避けることはできません。その一方で、実際に自分の“死”を体験した人はいません。死の体験者は0%であり、どんなものであるかを語られることは、ほぼありません。“死”は生きている人間は体験したことがない、未知のものです。だからこそ、怖い、おそろしいと感じる人が多いのかもしれません。
“死”の基本情報を知っておこう
未知のものだから怖いのであれば、まずは“死”がどういうものであるか知ることから始めてみましょう。医師が死亡宣告をするときには、肺、脳、心臓の機能をチェックします。胸部を聴診したり、腕や首の動脈の触診をしたりして、呼吸や脈拍を確認します。
呼吸が確認できず、脈拍がゼロであれば心肺拍動と呼吸が停止しています。テレビや映画などで亡くなった人の目にペンライトの光を当てているのは、光が当たったときの瞳孔の反射や大きさを確認しています。反射が起こらなければ、脳機能が停止しているとみなされます。
これらをチェックして、心肺拍動の停止、呼吸の停止、脳機能の停止という死の3兆候が確認されると死亡と認定され、死亡宣告が行われます。ちなみに、死亡宣告できるのは医師のみです。事故などのニュースで「心肺停止後に医療機関で死亡が確認された」と報道されるのは、現場に医師が不在だと死亡判断ができないためです。
