選挙において最も重視されるべきは、候補者が語る政策や理念です。
しかし現実にはそれらの言葉が届く前に、有権者はすでに「好きか、嫌いか」「信頼できるか、できないか」といった感覚で候補者を無意識に分類しています。その第一印象を判断するのに要する時間は、わずか0.1秒──。
有権者は、政策論争が始まるよりも先に、外見から無意識に「身構える」傾向があるのです。
今回の参議院選挙。連日テレビで放映される「党首討論」を見ていると、どうやらほとんどの党の党首は同じ色や形のネクタイをすると決めているようです。
顔にもっとも近いネクタイは、色・柄・質感・結び方によって視覚的にメッセージを伝える「非言語コミュニケーションの手段」として強い力を持ちます。各党は「どんな風に見られたい」という意図をもってネクタイを選んだのか。党首1人ひとりの戦略を読み解いていきたいと思います。
揃って「青」を選んだ"老舗政党”のリーダーたち
今回の参院選では、いわゆる“老舗政党”のリーダーたちがこぞって「青」を選んでいることが印象的です。
自民党・石破氏、公明党・斉藤氏、立憲民主党・野田氏はいずれも青のネクタイ。青いブラウスを着用した共産党・田村氏を含めて、歴史が長い政党の党首たちは「青」を基調に据えたことになります。
色彩心理に学おいて「青」は、信頼、誠実、安定、若さ、清潔感、そして相手を鎮静化させる効果があるとされ、ビジネスシーンでは最も支持される色です。
自民・石破氏は、水色を基調に控えめな水玉や、コントラストの効いたストライプといった柄物を選択。自民党のイメージカラーは赤ですが、石破氏は以前から青系を愛用しており、若々しさと落ち着きのバランスを取りつつ現職総理としての余裕を示す装いでしょうか。攻める野党に対して「落ち着いて対処する姿勢」を示す鎮静効果を狙ったとも読み取れます。

