街に五星紅旗が増えた

 1997年の主権移譲(いわゆる「香港返還」)以来、香港は中国領の「特別行政区」という扱いなのだが、かつては街のなかで中国国旗を見る場所は、政府関連施設などを除けば比較的限られていた。とりわけ2019年の香港デモの際は、中国国旗がひきずり下ろされたり、墨を投げられたりしていたので、街ではいっそう中国国旗を見かけなかった。

 だが、現在は中国国旗だらけである。もちろん、あらゆる場所に出ているわけではないものの、繁華街を歩くと中国国旗と香港旗が万国旗のように大量に吊るされた一角が簡単に見つかる(おそらく中国資本のビルなどの周囲だろう)。ご丁寧にも、ただの「地域の旗」である香港旗は中国国旗よりもワンサイズちいさく、視覚的にも序列が明確化されている。

尖沙咀の路地にて。2025年7月7日筆者撮影

 また、香港の街に数多く掲げられた選挙用の横断幕も、当然ながら建制派(親体制派)の政党と議員のものばかりになったため、結果的に彼らのスローガンを通じて中国共産党的な主張が市内にあふれるようになった。国安法で民主派の政党が壊滅したことで、往年のような「民主的な香港を作ろう」「行政長官を直接選挙で選ぼう」といった言葉は完全に消えている。

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 また、過去の雨傘運動から香港デモにかけての時期(2014~2020年)は、「香港人」のアイデンティティを強調するような商品──。つまり、ファストファッション店で毛筆書体の「香港人」デザインTシャツが売られたり、書店の店先に香港への愛着を強調する書籍が溢れていたりもしていたのだが、現在それらはゼロではないものの激減した。