愛想のいい若者こそが店主、アルバイトと思っていた女性は...
それはそうと、話を聞いていたら謎が解けた。頑固な店主など存在せず、愛想のいいその若者――津守敏明さん――が店主だったのだ。しかも女性はアルバイトどころか、奥様の葉月さんであった。
現在41歳の敏明さんは、大阪の大東市生まれ。父親の仕事の関係で小学校3年生のときに岡山県へ引っ越し、高校の調理科で調理を学んだ。卒業後は「大阪王将」に就職が決まり、大阪に戻ってきたのだという。
以来、大阪王将で働き続けた。
ほどなく「お待たせしました」とカウンターに乗せられたギョーザにも、大阪王将時代のノウハウが詰まっているのだろうか。焼き加減も見事で、ただ食べやすいだけでなくしっかりとした満足感を与えてくれる。ここに至るまで、しっかりまじめに働いてきたことがわかる。
だが実際には、キャリアが積み上がっていくのに比例して、苦悩も増えていったようだ。それは、大手チェーンでは避けて通れないことだったのかもしれない。
大阪王将から中華料理店の2代目店主に
「飲食の仕事やけど、(飲食には関係ない)サラリーマンみたいな仕事、管理の仕事とかが増えてきたり。料理がしたくて始めたのに、『半分ぐらいは違うことやってるな』みたいなんで。なんか、しんどなってきて。だから、もう飲食自体をやめようと思って、それで王将を辞めたんです。あんまり、とくに考えないで」
そんなころ、知り合いのお客さんを通じてこの店の存在を知る。敏明さんは2代目ということになるが、先代とは赤の他人。「ここに店があるってことも知らんぐらいのレベル」だったのだそうだ。
「そのお客さんとたまたま道端で会うて、『仕事辞めたんです』と伝えたら、『ほなら跡継ぎを探してる中華屋あるから、一回話を聞きにいかへん?』となって。で、次の日に話をして、『ほな、やります』みたいな。すごい偶然が重なって」
そんな経緯で、今年で約43年目となるこの店を引き継ぎ、丸2年になる。
ちなみに、敏明さんが奥様の葉月さんと出会ったのも大阪王将だ。つまり職場結婚だったわけだが、ご主人がこの店を引き継ぐかたちで独立するにあたり、不安はなかったのだろうか?


