リム・カーワイ監督をキュレーターに迎えた「台湾文化センター 台湾映画上映会」の第5回が7月12日、大阪大学豊中キャンパス大阪大学会館講堂(大阪・豊中市)で開かれた。昭和3年に建てられた歴史ある会館(登録有形文化財)の講堂で、台湾では珍しい熱いスポコン映画が上映された。灼熱の太陽をものともせず集った観客たちは、一層熱く盛り上がった。
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この日は、2024年製作の『燃えるダブルス魂』が日本初上映された。上映後のトークイベントには、本作のホン・ボーハオ監督と、大阪大学出身で元卓球部のリム・カーワイ監督が登壇した。
『燃えるダブルス魂』
卓球クラブに通う幼馴染の小学生男子、フーとホァンの2人は、将来最強のダブルスペアになることを誓い合っていた。しかし、母親の意向でホァンが別の強豪校に転校することになり、大会でライバルとして対決することになる――。少年たちをとりまく大人たちには、クールなコーチ役で福原愛の元夫でリオ五輪台湾代表の江宏傑が出演するほか、ビビアン・スーら豪華なキャストがそろった。
監督:ホン・ボーハオ/出演:ポン・ユーカイ、リー・シンウェイ、ビビアン・スー、レクセン・チェン、シー・ミンシュアイ/2024年/105分/©Rise Pictures Co.,Ltd.
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東京オリンピックで動き出した企画
リム・カーワイ(以下、リム) 多くの観客の心を燃えさせるこの傑作スポーツ映画は、そもそもどういうきっかけで生まれたのでしょうか。
ホン・ボーハオ(以下、ホン) きっかけは9年前、ある小学生の保護者との出会いでした。4人の子どもたちが卓球のサークルに入っていて、ナショナルチームの選手になるべく、卓球に情熱を注いでいた。その話が非常に面白くて、これをモチーフに物語が作れるんじゃないかと考えたのが始まりです。
早速脚本を書いてみたんですが、台湾では、スポーツ映画はなかなか投資が集まりにくいジャンルなんです。面白い企画だとは言われるものの、実現には至らず、脚本は7~8年もの間、引き出しの奥にしまわれたままでした。
転機となったのが、2021年の東京オリンピックです。台湾の選手が素晴らしい活躍を見せ、台湾中で卓球が大きな注目を浴びました。この盛り上がりを見て「今ならいけるかもしれない」と。再び脚本を持ち出したところ、幸運にも投資家が見つかり、映画を撮れることになったんです。
リム 東京オリンピックでは林昀儒選手と鄭怡静選手の混合ダブルスのペアが銅メダルを獲得。台湾で大変な話題となりましたね。映画の最後には林昀儒選手ご本人も出演されていますが、これはどういった経緯で実現したんですか?
ホン 彼に「この映画に出てもらえませんか」と相談したところ、「この映画は台湾の卓球界に大きな貢献をしてくれるはずだ」と快く引き受けてくれたんです。ほとんどボランティアのような形で、熱意をもって参加してくれました。

