大規模なオーディションを経て選んだ主役
リム 主人公の少年2人は、実際に卓球をやっていたんでしょうか。
ホン 脚本を書いた当初から、主役は「本当に卓球がうまい子」に演じてもらおうと決めていました。そこで台湾中の小学校の卓球のうまい少年たち500~600人でオーディションを行い、 まず20~30人まで絞り込みました。そこから3カ月間の演技訓練、卓球訓練を行いました。そして最終的に2人を選んだわけです。
彼らは演技経験はもちろんありませんでしたが、キャスティングした子どもの個性や性格をよく観察し、彼らの持ち味を脚本にフィードバックしていきました。その子の性格や癖を脚本に書き加えていく。そうすることで、子どもたちは無理なく、自分自身として役を生きることができるようになったと思います。
リム 主人公の一人、ホァンを演じた少年は天才ではないかと思いました。少し斜に構えた歩き方や目の動きなどとても面白いと思いましたが、監督が指導されたのですか、それとも彼がもともと持っていたものなのでしょうか。
ホン 彼はもともと、非常に自分の世界を強く持っている子でした。一人でいることを好み、誰かと遊ぶよりも、自分一人でいる方が楽しめてしまうようなタイプ。彼の独特の雰囲気は、彼自身の資質によるところが大きいです。ただ、それを映像としてどう表現するかについては、彼と2人で何度も何度も話し合いました。モニターを一緒に見ながら、「今の目の動きはどうか」「もっと殺気を込めたほうがいいのでは」などと、話し合いを重ねていったんです。
リム 日本でも有名なビビアン・スーはじめ、脇を固める大人たちのキャストは台湾を代表するような実力派ぞろいでした。
ホン やはり観客の注目を集めるためにも、脇を固めるコーチや親の役には、知名度のある実力派俳優を起用したいと考えました。彼らには撮影前の3カ月の訓練期間から参加してもらい、子どもたちとたくさんコミュニケーションを取ってもらいました。本当の家族やチームのような空気感をじっくりと作っていくことで、あのリアルな関係性が生まれたのだと思います。
