今、アメリカで大きな話題になっている事件がある。世界的に著名なラッパーであり音楽プロデューサーのディディ(55/本名:ショーン・コムズ)が性的人身売買や恐喝などの容疑で逮捕、起訴され2か月に及ぶ裁判が行われたのだ。

ディディのXより

 注目を集めたのは主に「フリークオフ」と呼ばれるセックス・パーティにかかわる容疑だった。ディディは元恋人のキャシー(38/本名:カサンドラ・ヴェンチュラ)が22歳の頃から、麻薬を与えた上で複数の男性エスコートと数日間にわたってセックスをさせ、自慰をしながらそれを鑑賞するという行為を約10年間続けていた。

 キャシーは法廷で何を語ったのか。全米が注目していたこの裁判で明らかになったこととはーー。在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。(全4回の2回目/続きを読む)

ADVERTISEMENT

※本記事には身体的・精神的虐待についての記述があります。ご注意ください。

◇◇◇

法廷で語られた「フリークオフの内容」と「苛烈な暴力」

 キャシーは数日間続く睡眠なしの麻薬摂取とセックスで疲れ果て、かつ複数人との度重なる性行為によって感染症にも(かか)り、フリークオフ後は心身回復に数日が必要だったと証言している。

※写真はイメージ ©AFLO

 体調が回復すると次のフリークオフのために男性エスコートの手配(ディディは自分の目の前でセックスさせる男性エスコートをキャシーに選ばせ、予約作業を行わせていた)、ホテルの予約、衣装などの準備をせねばならず、毎週のように行われるフリークオフが“仕事”になってしまったとも語った。

 キャシーはバッドボーイ・レコーズ*とアルバム10枚の契約を行なったが、フリークオフに忙殺され、かつディディにキャシーをシンガーとして成長させる意思がなかったこともあり、リリースできたのはファーストアルバムだけだった。この生活が10年間続き、キャシーは通算で何度フリークオフを行なったかを覚えていなかった。
*ディディがCEOを務めるレコード会社

交際時のディディとキャシー〔2015年5月4日撮影〕 ©AFP=時事

 裁判ではフリークオフを撮影した動画が陪審員のみに見せられた。ジャーナリストの閲覧は許されなかったが、陪審員の中には途中でイヤフォンを外してしまった者がいたと報じられている。見るに耐えない内容だったのだと思われる。