今、アメリカで大きな話題になっている事件がある。世界的な人気ラッパーであり音楽プロデューサーのディディ(55/本名:ショーン・コムズ)が性的人身売買や恐喝などの容疑で逮捕、起訴され2か月に及ぶ裁判が行われたのだ。 

 全米が注目していたこの裁判で明らかになったこととはーー。在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。(全4回の1回目/続きを読む)

ショーン・コムズ被告 ©AFP=時事

※本記事には身体的・精神的虐待についての記述があります。ご注意ください。

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世界的な人気ラッパーが「売春目的の移送罪」で有罪

 アメリカのヒップホップ/エンターテインメント界の大立者、ディディことショーン・コムズが8週間に及ぶ裁判の末、「売春目的の移送罪」で有罪となった。同時に起訴されていた「組織犯罪共謀罪」「強制、詐欺、脅迫による性的人身売買罪」では無罪となり、終身刑こそ免れたものの最長20年の刑となる可能性がある。この裁判はDV(家庭内暴力)の定義に再考が必要であることを考えさせる、非常に重要なものとなった。

 罪状は3つだが、注目を集めたのは主に「フリークオフ」と呼ばれるセックス・パーティにかかわる容疑だった。ディディは恋人だったR&Bシンガーのキャシーことカサンドラ・ヴェンチュラ(38)に麻薬を与えた上で複数の男性エスコート(高級男娼)と数日間にわたってセックスをさせ、自慰をしながらそれを鑑賞するという行為を約10年間続けた。

R&B歌手のキャシー・ヴェンチュラ。22歳頃にディディにフリークオフに参加するよう強いられたことを明かした(本人インスタグラムより)

 さらにディディはキャシーの顔が腫れ上がり、今も傷跡が残るほど殴るといった身体的暴力を頻繁に振るい、キャシーが密かに付き合い始めたラッパー、キッド・カディの車に火炎瓶を投げ入れたともされている。

焦点は「キャシーは自由意志でフリークオフを続けたか否か」

 裁判の焦点は、キャシーが10年もの長期間にわたってディディの元を離れなかったことから「キャシーは自由意志でフリークオフを続けたか否か」に絞られた。