世界的に著名なラッパーであり音楽プロデューサーのディディ(55/本名:ショーン・コムズ)が性的人身売買や恐喝などの容疑で逮捕、起訴された事件が、アメリカで大きな話題となっている。
注目を集めたのは主に「フリークオフ」と呼ばれるセックス・パーティにかかわる容疑だった。ディディは元恋人のキャシー(38/本名:カサンドラ・ヴェンチュラ)が22歳の頃から、麻薬を与えた上で複数の男性エスコートと数日間にわたってセックスをさせ、自慰をしながらそれを鑑賞するという行為を約10年間続けていた。
2か月に及ぶ裁判で下された判決とは。全米が注目したこの裁判が意味するものは。在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。(全4回の4回目/はじめから読む)
※本記事には身体的・精神的虐待についての記述があります。ご注意ください。
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裁判結果は「売春関与は有罪」だが「人身売買は無罪」に
ディディは以下の5つの罪状で起訴され、裁判の結果、(3)(5)のみで有罪となった。それぞれ最長で10年、合算で20年の刑となる可能性があるが、全て有罪となれば終身刑もあり得ただけに弁護側の勝利と言えるだろう。量刑宣告は10月に予定されている。
(1)組織犯罪共謀罪
(2)強制、詐欺、脅迫による性的人身売買罪(キャシーに対する)
(3)売春目的の移送罪(キャシーに対する)
(4)強制、詐欺、脅迫による性的人身売買罪(ジェーン*に対する)
(5)売春目的の移送罪(ジェーンに対する)
*仮名。ディディがキャシーの後に交際していた女性で、彼女もフリークオフに参加させられていたと証言
(1)について、ディディを訴追した連邦側はディディが自身のアシスタント、ボディガード、その他の人員を使い、各種の犯罪行為を行わせていたことからこれを「組織犯罪」、ディディをその首謀者と定義したが、陪審員はこれを却下した。
ディディのアシスタント6人が証人として証言、うち4人は男性。通常業務に加えて麻薬の手配や、ディディがライバル・アーティスト襲撃に出掛ける際の運転手など犯罪行為も務めさせられているが、いずれも業界随一の大物の下で働けることに陶酔し、ディディに忠誠を誓っていた。
