――アメリカはボディビル先進国のイメージがあるのですが、実際に行ってみていかがでしたか?

飯島 全然、違いました。まずボディビルが市民権を得ていることに驚いた。女性がタンクトップとスパッツ姿で、平気でその辺を歩いている。通りがかった人が、「So beautiful!」なんて言って褒めているんですね。日本であればありえない光景。そんな格好をして歩こうなんて思わないし、そういう人が隣にいたら、「Beautiful」じゃなくて、「女のくせにどうしてそんな格好しているんだ」ってなっちゃうでしょ? カルチャーショックを受けましたよね。学校が終わった後は、ジムへ行って練習して、ホームステイ先に帰る。とても居心地が良くて、本当に楽しかった。

トレーニング中の飯島さん(写真=本人提供)

――ゴールドジムでは、女性がどんな練習をしているかを盗んで?

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飯島 「どういうトレーニングをしてるんだ?」ってチラ見しながらね(笑)。私は、女性のトレーニング方法が知りたかった。日本にいたらいつまで経っても分からない。男性のトレーナーの指導は、あくまで男性の筋肉に対してなんですよ。男と女は体型も違うし、体の組織もホルモンも違う。国内で誰も知らないんだったら本場に行くしかない。

――実際、飯島さんは本場の練習を見て、女性の鍛え方のどんな点に注目されたのでしょうか?

飯島 ボディビルとして美しく見えるのは、肩があってウエストにかけて細くなって、お尻が張っていて、再び足元に向かって細くなる――逆三角形になっているのが、もっとも美しいフォルム。それは男女を問わない。ところが、日本の女性はいわゆる「なで肩」で、それがいいとされていたから、日本にいるときは肩のトレーニングはしなくていいと言われていた。でも、それだと逆三角形にはなれない。結局、肩をしっかり作らないと逆三角形の「辺」ができないから、アメリカの女性ビルダーたちがどうやって肩周りの筋肉を鍛えているのか注視しました。

大会に出場中の飯島さん。綺麗な逆三角形のフォルムに鍛え上げられている(写真=本人提供)

 あと、女性はウエストが細くてヒップに張りがある――くびれがあるから逆三角形に見えづらくなってしまう。そこで、ウエストの細さをキープしながら、太ももの裏から腰にかけて立体的に筋肉を作ることで“厚み”を作ることを心がけた。

――まさにパイオニアですね。女性の鍛え方についても、アメリカから輸入していたと。

飯島 実際に行くと、日本が遅れていると気が付かされた。本心はもっと学びたかったけど、日本で稼いで蓄えたお金が底をついたので、帰国することに。学費に加え、ジムの月謝、ホームステイ先への入金で、お金がみるみる減っていくのに、学生ビザだからアルバイトはできない。それで、アメリカで学んだことを持ち帰って、グラフィックデザイナーに復職しました。ボディビルを続けることに支障が出ない条件で、再就職先を探しました。

次の記事に続く 「黒髪ボブはウケが良くて、会場がワーッと沸いた」日本人女性初のプロボディビルダーが語る、国際大会で良い点をとる“日本っぽい演出テクニック”

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