「お前はほんまに贅沢な撮り方するな」
安田 進藤さんから言われたのは、「まとめて撮れ。それが一番安くつくから」と。「でも、進藤さん、まとめて撮ったら夏の画ばっかりになってまうんですよ」と。僕らスタッフは10人ぐらいしかいないから、しかも僕自身がいろんな役職を兼任して、音声マンは東京から知り合いを呼んだり床山さんとか衣装さんは東映さんにお願いしていたんですけれども、あとの残りのスタッフは丸っきりの素人なんです。そんな10人で固めて2週間3週間で撮るなんてできないですと。だから、悪いけれども、7月8月でオープンセットを使うシーンだけ撮らせてもらって、その後は毎月大体5日から1週間ぐらい撮影して、撮影の間に次の準備を整えていくという感じで、半年ぐらいで何とか撮らせてもらいたいんですと。「お前はほんまに贅沢な撮り方するな」って笑ってはったけれども、結局そういう感じで進んでいって。
でも、すごく恵まれていたのは、コロナで俳優さんたちのスケジュールが結構空いていたこと。山口馬木也さんとか冨家ノリマサさんとか、素晴らしい俳優さんがインディーズ映画だと侮らずに、全員誠心誠意作品に向き合ってくれはった。スタッフも含めて、何とかこの映画を最後まで完成させたいという気持ちの中、半年ぐらい走って。
11月の下旬にクライマックスシーンが撮れたんです。いろいろあったけれども、いいのが撮れた。あと12月は10日ぐらいまでに4~5日撮ったらクランクアップできて、何とか大急ぎで編集して、大晦日までに仕上がりそうだと。
——助成金が指定している条件ですね。
安田 そうそう。何とかクリアできそうだと思っていた11月末に、親父が脳出血で倒れて。自分的にはしんどい時期もあったんやけど、何日か休んで撮影を再開して何とか初号を完成させました。
——京都の撮影所の方々が、脚本を読んで協力したいと言ってくださったのは、時代劇の灯を消すなという内容だったこともありますか?
安田 そういうことではないと思います。それはプラスには絶対作用してんねんけども、たとえそういう内容であっても、おもろなかったらあんな展開にはならないですよ。
注釈
1)福本清三 東映剣会所属の俳優。50年以上にわたり、斬られ役、殺され役を演じ続けた。
2)床山 演技者の「かつら」の結髪、手入れをするスタッフ。
3)AFF 文化庁による、コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の支援事業。
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