次回作の構想

——次回作はどのように考えていますか?

安田 最近山田洋次監督とか本広克行監督、犬童一心監督とかがすごくお気遣いくださって、いろんなアドバイスをいただいています。本広監督が、「安田監督は求められているものを作ったほうが、作品が大きくなっていくよ」みたいな、プロデューサー的な目線で見てくれてはって。監督は一回成功するといろんなものを作りたがるんやけれども、やっぱり同じ方向性で進んでいったほうがいいよというふうにおっしゃってくれはって。

安田淳一監督 ©藍河兼一

——次回作の話が映画会社からも来ていると思うんですけれども、これからも未来映画社として作っていくんですか?

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安田 いきたいですね。僕自身も、商売も長いことやってきたし、映画をヒットさせたいというプロデューサー的な側面も強いし、実際、プロデューサー対象のエランドール賞とか藤本賞もいただいてものすごくうれしかったので。監督として関わるだけじゃなくて、製作委員会の中に入ってインセンティブ的な利益を目指すというのももちろんあるし。そうすることによって、本気でええものを作ろうというふうな気合も入ってくると思うから。企画としては、映画会社さんから持ち込まれているものもあるし、自分がどうしてもこれを撮りたいというところで企画書を提案しているものも何件かあります。

——次回作はこれまでのように一人何役もこなす体制ではなく、商業映画のスタッフの体制で撮るつもりですか?

安田 そうですね。よくインディーズの監督が初めて商業映画体制でやると、いろんなプロのスタッフとの軋轢に負けてしまって思うように進まへんみたいなことがあるようですけれども、僕の場合は、もう58歳だし、自分である程度技術のことも分かっているし、論理的にちゃんと説明もできるから、その心配はしてないんですよね。ただ、本広監督に「いい助監督は絶対付けなあかんよ。紹介するから」って言われて。

安田監督(左)と小中監督 ©藍河兼一

——僕は最初に商業映画の体制で撮った時、効率を優先する商業映画のやり方と、自主映画が大切にしていることの違いに戸惑った経験があります。

安田 僕は自分のお金でやっていたものやから、自分が納得いくまでやってきた。インディーズ映画が商業映画に唯一対抗できるところは、納得できるまでやり直せることやから。メジャーやと予算とかスケジュールの都合でパッと切って、これでしょうがないと思ってしまうけれども、僕の場合はシネコンで公開した後も撮り直しをしたり。『ごはん』も4年かかった。台風が来るまでずっと待っていたりしたので。

——台風のカットは普通、撮れないですよね。

安田 そう。あれ、3年目に台風が来たので車ごとひっくり返りそうになる雨風の中で命がけで撮りました。どう見ても台風なのにセリフでは「ゲリラ豪雨」と説明される(笑)。

——だから、実はすごくお金がかかっている映画なんですよね。製作費400万といったって、自分の人件費というものを入れてないので。

安田 それは本当にプロでは撮れない。特に自然相手の映画はね。僕は今のところ、自分のことを映画監督とは言ってないんですよね。「自主映画の監督です」と絶対言うんです。人のお金でメジャーの作品を撮った時に初めて自分は映画監督として名乗ろうと僕の中で決めていて。いつかメジャーの、松竹とか東宝とかで監督だけやった時に、初めて映画監督って言いたいなと思っています。

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