そしてそれだけではなく、味も輪郭をはっきりさせ、直球の味わいを目指しています。一口食べたらすぐに『美味しい』と感じられるような味づくりにこだわりました」(菜月さん)

単価が上がる「特製」と「ライス」はあえて出さない

見た目からするとオシャレで、洋風のパスタと言われることもあるかもしれないが、「ビスク」のラーメンはド直球の味わいだ。旨味のわかりやすさやインパクトはラーメンそのものである。菜月さんの修業時代からの意地を感じる直球の旨さなのである。

そして、「ビスク」には「特製」トッピングもなければライスもない。これは菜月さんのこだわりだ。

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トッピングが豪華な「特製ラーメン」を出せば売り上げの向上も見込めるが、「スープを主役にしたい」という思いの中で、通常のラーメンこそがベストであると判断した。ライスもオペレーション上の問題で提供をやめた。

ちょっと頑固かもしれないが、自分なりの軸を持って成功しているのが凄い。

メニューの開発と調理は菜月さん、そして調理補佐と接客、バックオフィス、ドリンク類は源己さんが担当する。どちらも真剣に向き合っているので、たまには喧嘩もする。

しかし、毎日営業後片付けをしながら2人で反省をし、それをすぐ翌日の営業に生かす。PDCAをしっかり回すようにしている。

「夫はいつも私を尊重してくれて、作りたいものを作らせてくれています。いつも応援して支えてくれているので、私はラーメンを作ることに専念できていて感謝しかありません」(菜月さん)

「妻はこの店のエースで4番」

「ビスク」では菜月さんが商品開発担当だが、どうやると売れるかは2人で徹底的に考える。「お客さんに喜んでほしい」という思いが先行する中で、原材料をふんだんに使ったラーメンで原価が上がるなど厳しい部分はあるが、夫婦2人でやっているのでギリギリなんとか収益を確保できているという。

「妻はこの店のエースで4番。一切妥協せずに味を追求しつづける姿を尊敬しています。彼女が能力を最大限発揮できるよう、私はキャッチャーから外野まで、そのほかの部分をすべて支えていければと思っています」(源己さん)