その後2人は結婚し、独立を決めてから一年半物件探しをする。
鉄道の各駅の乗降客数や人口などを調査し、エリアを絞りながら探したところ、東十条の物件が見つかる。6坪の小さなお店だったが、夫婦2人で回せる広さで、お店の形も良く、人通りの多い環七沿いだったのでここでやることにした。東十条は老舗から新店までラーメン店の軒数も多く、ラーメンの元気な町だったことも大きい。こうして2022年8月「ビスク」はオープンした。
見た目はオシャレ、味はガツンとくる一杯を
「丿貫」で学んだことをベースにオリジナリティーを出したかった菜月さん。女性のお客さんにもたくさん来てほしいという思いもあったので、ガツンとした旨味がありつつ上品でオシャレな一杯を作ろうとしていた。
「『ビスク』という店名のとおり、スープを飲んだだけで素材の旨味が感じられるものを目指しました。
海老やあさりを使うことは決めていましたが、オープンまでなかなか味が決まらず泣きながら試作をしていましたね。初めて食べて感動を覚える味、食べて驚いてもらえるラーメンを目指していたので、イメージから程遠い仕上がりに悩みました」(菜月さん)
「丿貫」は魚介を使ったインパクトのあるラーメンが人気で、菜月さんはそこに負けないものを作りたかった。
こうして「オマール海老ラーメン」「あさりカルボ」「牡蠣ラーメン」の3つのレギュラーメニューを完成させた。中でも「あさりカルボ」は「丿貫」時代に菜月さんが作った人気の限定メニューをもとにブラッシュアップして完成させたものだった。
オープン時から客入りはよく、地元のお客さんが9割ほどを占め、常連客も増えた。当初はまだ段取りが悪く、片付けや仕込みに手こずって終電を逃す日もあったが、じきに落ち着いてきて安定してきた。しかし、順調かと思っていた1年後、2023年夏に客入りがガクッと減る。
熱々のラーメンを思い切ってやめた
「夏場が暑すぎて、ダイレクトにお客さんの入りが悪くなってしまったんです。2023年はなんとかやり過ごしましたが、来年は絶対これではいけないと一年かけて対策を練ることにしたんです」(菜月さん)