かつて、テレビ局は学生の就職先として揺るがぬ人気があった。しかし最近では『就職四季報総合版』（東洋経済新報社）の「就職人気企業ランキング」100位圏内に入らないほど、その人気は後退しているという。
“テレビの絶頂期”を見ながら子ども時代を過ごし、2014年に退職するまで15年間NHKでアナウンサーとして勤務した今道琢也さんは、そんな現状のテレビ業界をどう捉えているのか。データを駆使して分析した『テレビが終わる日』（新潮新書）より一部を抜粋して紹介する。（全3回の1回目／続きを読む）
◆◆◆
小論文指導の現場でもテレビ局志願者がゼロに
学生の就職先としての「テレビ離れ」については、私自身も肌身で感じたことがあります。私の本業は、インターネット上で展開する小論文指導専門の塾の経営です。2014年に退職したのち、創業しました。ちなみに、会社を辞めた理由は「テレビの将来に見切りをつけたから」などという大層なものではなく、ただ単に、自分で事業を運営したかったからです。
日本では、大学入試、就職試験、昇進試験など、人生の節目節目で小論文試験を受ける機会があります。中でも、テレビ局をはじめ、新聞社、出版社などマスコミ業界の就職試験では、多くの会社で小論文や作文が取り入れられています。
創業した当初は、私自身もテレビ局にいたことがあるため、テレビ局などを受験する人からの指導依頼が多く来るのではと考えていました。しかし、その予想に反して、昇進試験を受ける方からの依頼が最も多く、これに公務員試験、大学入試の受験者が続きます。そのようなわけで、テレビ局志願者からの指導依頼は、もともと多くはなかったのですが、それでも初めのうちは、毎年何人かは指導の依頼が入ってきていました。
しかし、だんだんとその依頼も減って行き、3～4年くらい前でしょうか、ついにテレビ局志願者からの指導依頼がゼロとなりました。そしてその後もゼロの状態が続いています。これは、先に掲げた「就職人気企業ランキング」の上位100社からテレビ局が消え去った時期とも重なります。一方で、公務員試験などの受験者からの指導依頼は以前と変わることなく寄せられていますから、テレビ局志願者の指導依頼だけが「消滅」してしまった格好です。
小さな一私塾で起きたことですから、この話を一般化することはできないのですが、私自身も「テレビ局の人気がなくなっているのかな」と、感じた出来事ではありました。
