やらせ、捏造、誇張、切り取り
やらせ、捏造、物事の誇張、一面的な切り取りなどについては、どこでも起こりうるだろうな、というのは率直に思います。というのも、テレビ番組は、筋書きありきで制作されがちだからです。
例えば、私自身このような経験をしています。ある湖で粒の大きなシジミが採れるということで、そのシジミの漁や料理などを紹介する企画がありました。私はその番組のリポーターだったので、担当ディレクターと一緒に、「ここで採れるシジミは大きい」という証言を取るべく、湖畔でシジミ料理を出す店主にインタビューを試みました。
私が「ここで採れるシジミの大きさはどうですか」と聞いてみたのですが、期待に反して店主は「ここのシジミは小さいよ」と答えます。肩透かしを食らった私は、何度か角度を変えて同じことを聞いてみたのですが、店主からは「いや、ここで採れるシジミは小さいよ」という答えしか返ってきませんでした。
そこで、取材のお礼を言って引き上げたのですが、ロケ車に戻ると担当のディレクターは「あのジジイ、『シジミが小さい小さい』言いやがって、あんなの使えねえ」と吐き捨てるように言ったのです。結局、番組ではこの店主のインタビューは使われませんでした。
私は何もそのディレクターを批判しているわけではなく、テレビ人は私も含め、そういう思考に陥りがちだということです。なぜそうなるのかというと、すでに「この湖で採れるシジミは大きい」という前提で企画を出し、ロケや編集日程、放送日が組まれているために、この段階で構成を大きく変えることが難しいからです。従って、最初の筋書きどおりにインタビューを取ってくることが仕事になってしまいます。制作日程、予算に十分な余裕があれば、改めて構成を考え直すことも可能でしょうが、そういう恵まれたケースは多くありません。
