樹海にいた、死してなお“モテる遺体”
――これも、らむさんの著書『樹海怪談』に出てきたんですが「モテる遺体」という話、興味深かったです。
らむ それはHIDEくんって呼ばれている遺体ですね。樹海で遺体になった人が「HIDEくんへ 就職おめでとう」という手紙を持っていて。
ホストなのかビジュアル系バンドなのかわからないんですけど、そういういわゆるゴシック風ファッションで亡くなっていた。僕はリアルにその遺体は見てなくて、写真で見ただけなんですけど、彼はイベントの女性のお客さんに非常に人気があるんです。
――遺体なのに。亡くなってもルッキズム、みたいな。
らむ 死んだらなおさらルッキズムですよ。他に何にもないんだから。
――キレイな遺体なんですか。
らむ まっさらではなくて、ハエがたかってはいるんだけど、容貌はギリ損なわれていなくて。かっこいいのはわかる、まだ傷みきってない感じ。
――ご自身で遺体を発見したのは何回ですか?
らむ 確か3回ですけど、1人で発見したのが2回ですね。最初はイラストレーターの人とキノコの写真を撮りに行ったとき、その後編集者と行って2体目を見つけて。
その後は遺体を探すKさんと出会って一緒に行動するようになって、リアルな遺体は40体くらいは見ているかと……ああ、自分で見つけたのも、骨を合わせると4~5体はあるかな? 最初から完全に骨になってると、申し訳ないけど、思い出としての差異がなくなってしまうんです。
――遺体を見つけると、やっぱりショックなんですか?
らむ ビックリはしますけど「何でええ!」ってことはないですね。思いっきり探しに行ってますから「見つかった!」という感じです。
――見つけたら、警察に電話して。
らむ 僕が自分で見つけた場合は警察に通報してますけど、Kさんは通報しない。別に違法ではないんでね。私有地だとダメなんですけど、外であれば別に違法ではないんで。
殺人には向かない樹海の地盤
――犯罪絡みの遺体もあるんですか?
らむ 一昨年くらいに外国人の方が遺体を見つけて通報してましたけど、それは殺人犯でしたね。香港の方で、香港で殺人をして日本に逃げてきていたみたいで。意外と樹海から殺人犯が発見されることも多いらしいです。その人は追い詰められて自殺したみたいですね。
――樹海で殺人事件が起きる場合もあるんでしょうか。
らむ 樹海は地盤が硬くて遺体が埋められないから、殺人や遺体処理には向いてないです。樹海でインタビューした殺し屋(「擬似殺人されてみましょう」人肉を食べる“ヤバい殺し屋”と樹海で2人きりに…ルポライターが経験した“戦慄取材”の一部始終 参照)がなぜ樹海に遺体を放置してしまったかというと、まあ埋められなかったからなんです。一応自殺に見せかけたんだけど、拷問でケガをさせていたんで、司法解剖されちゃって。それで発覚したっていう。
――傷があればそうなりますよね。
らむ でも結構な状況でも自殺で処理するのが警察なんじゃないかな。まあ、なぜかそのときはちゃんと調べてましたね。
あと、あからさまに殺されたんだろうなって遺体を見つけたこともありました。2月なのに裸だし、靴を履いてないし、木に向かって首吊っちゃってる。まず自殺なら木を背にしますよね。どう考えても自殺では無理な体勢だったんだけど、事件化されたって話にならなかったんで「自殺で処理したな」と思ってるんですけどね。
