「こんな可愛い服を弟たちに着せたかったと思い、つい買ってしまいました」

 富美子さんのファッションはいつも若々しい。楽しいキャラクターのTシャツにパーカーやジャンパー。これらのファッションには、富美子さんの“ある思い”が込められているという。

 富美子さんが着用するキャラクターの服や帽子は、「初めて見た時、こんな可愛い服を弟たちに着せたかったと思い、つい買ってしまいました」。それが始まりで「今では自分自身気に入って、こんなのばかり着ています」と富美子さんは笑う。

©︎文藝春秋

 最近、取材のたびに聞かれる「これからしたいことは?」の質問に「南の島で泳ぎたいですね」と答えているそうだ。横から京子さんが笑いながら「実は南の島移住計画を立ててます」と言い、2人で笑い始めた。

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「この方は、泳ぎが得意なもんですから、私たちきょうだいがまだ小さい頃も、浅いところで遊んでいる私たちを置いてじゃあ行ってくるって大きい麦わら帽子を被って小さくなるぐらいまで泳いで行って、沖でぷかぷかしてたんですよ」(京子さん)

 富美子さんは現在の政治情勢に対しても、歯に衣着せぬ発言を続ける。

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「私は仕事先で母のポストをチェックしてはときどきヒヤヒヤしてます。最近はユーモアまじりでも、誰かを刺激してしまうかもしれない投稿は控えた方がいいですから」(京子さん)

 しかし富美子さんの発信は確実に広がっている。

「私が今一番嬉しいなと思うのは、私のツイート(ポスト)に応えて下さる方がいらっしゃること。私は朝晩のツイートに必ず『#核兵器反対』『#戦争反対』とハッシュタグをつけているんですが、それに応えてくださる方が同じタグをつけてくださって、本当に嬉しいな、大事だなと」(富美子さん)

 96歳の被爆者が発する言葉には重みがある。戦争を実際に体験し、家族を失った当事者の声だからだ。

 年齢を重ねても新しいことにチャレンジし続ける富美子さんと、それを支え続ける京子さん。戦争の記憶を語り継ぐという重要な使命を担って、96歳の冒険はまだまだ続いていく。

わたくし96歳 #戦争反対

森田 富美子 ,森田 京子

講談社

2025年6月4日 発売

最初から記事を読む 「絶対に話さない」と決めていた“原爆で家族5人を失った日” 長崎生まれの森田富美子さん(96)が手で作った“30cm”の壮絶すぎる意味とは…

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