文春オンライン

「本気の昆虫採集」おじさん2人旅 殺人現場編

ツチハンミョウ好き男子の虫採り記 #1

note

体育は「2」だけど、チョウは採れる

<登山道の入り口へ移動。日が差してきた>

福岡 あ、白いのがいる。(目にもとまらぬ速さで網を動かし捕獲)

舘野 おお、凄い! さすがチョウ屋の動きですね!

ADVERTISEMENT

福岡 1回で採れないと、何度やってもダメなんです。これはスジグロチョウだな。私はあらゆる運動が苦手で、体育は2だったんですけれど、チョウだけは採れる。

舘野 もともとチョウがお好きなんですね。

福岡 そう、見た目の美しさと、メタモルフォーゼ、変態するところが好きなんです。満員電車にいるヘンタイじゃなくて、変態ね。昨日までモコモコした毛虫だったのが、サナギになって、ドロドロした中から美しいチョウが出てくる。

舘野 そして、ひらひらと空を飛んでいく。

ネオンカラーのオオセンチコガネ、タラノキにいるセンノキカミキリ

舘野 (地面から拾い上げ)これが、今度絵本にしようと観察中のオオセンチコガネです。

福岡 ああ、きれいな甲虫だ。ネオンカラーですね、ぴかぴかしている。(手に取って転がす)お腹のほうも色がきれい。人間の手の温度って、虫にとっては、すごく熱いんですよね。こいつも驚いているだろうな。

オオセンチコガネ ©三宅史郎/文藝春秋
オオセンチコガネ 腹側 ©三宅史郎/文藝春秋

舘野 おや、あそこにいそうだな(シュシュシュと竿を最大限に伸ばし、高いところにある樹の枝を網で探る)。ほら、いた。センノキカミキリです。

福岡 見えないところから、よく採れましたね。すごいな、手品を見ているみたいだ。

舘野 食痕(虫が食べた痕跡)が見えたので。これはタラノキなんですが、上のほうの葉っぱが枯れているでしょう? この葉を食べる大型の虫は、センノキカミキリかタテジマカミキリなんです。

長棹でタラノキを叩く ©三宅史郎/文藝春秋
センノキカミキリ ©三宅史郎/文藝春秋

福岡 さすが、昆虫探偵。論理的な仮説です。しかし、この竿は長いな。しかも、軽い。

舘野 「六本脚」のカーボンファイバー製です。1万7000円くらいします。こういうのがない時代はタモ竿も使っていたんだけれど、重くてね。

福岡 やはりこれぐらいの軽さじゃないと振り回せないですよ。おお、ルリタテハがいた!

<2人でチョウを追いかける>