「中央アジアの北朝鮮」という異名を持つ国をご存じだろうか。その国の名は、トルクメニスタン。日本の約1.3倍ほどの面積を誇る国土に、約660万人が暮らしている国だ。

 ギネス登録されたこともある、想像を絶するほど巨大な絨毯や、世にも珍しい「黄金の馬」など、珍しいものがたくさん存在する同国の様子を、世界各国を旅するライター・フォトグラファーの白石あづさ氏による新著『中央アジア紀行 ぐるり5か国60日』(辰巳出版)から一部抜粋し、お届けする。(全3回の3回目/最初から読む)

ギネス登録された巨大絨毯のある、国立トルクメン絨毯博物館(写真提供=白石あづさ氏、以下同)

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「踏まれれば踏まれるほど味が出る。絨毯も人生も同じです」と言ったのは、トルコで会った絨毯売りだったか。格言カルタが作れそうなほど、遊牧民のルーツを持つ人々にとって絨毯とは特別なもので、ただの敷物ではない。

 中でも「水はトルクメン人の命、絨毯はトルクメン人の心」ということわざまであるトルクメニスタン人の“絨毯推し”は猛烈である。

 2500年前から絨毯が織られていたこの国では「絨毯省」まであり、毎年5月には「絨毯の日」を祝う。さらに5部族の絨毯の模様が描かれている国旗や国章は、世界でもトルクメニスタンだけだ。

「省」まであるほど、トルクメニスタンでは絨毯が特別なものとされる

 昨夜はなんだか2時間くらいしか寝ておらず、欠伸が止まらなかったが、迎えにきたSさんとともに10万枚のコレクションを誇る絨毯博物館へと向かった。瞳の美しい学芸員の女性が出迎えてくれて、博物館の宝である世界一大きな巨大絨毯「トルクメンの黄金時代」が架けられた空間に案内された。