「不合格なんて信じられない。この嘘つき!」

 2014年、27歳のとき、のぞみは滋賀医科大学医学部看護学科に合格を果たす。医師になる夢は母も数年前からあきらめていたが、将来は助産師になるよう命じる。その偏見に驚くが、看護師は患者の汚物処理を行うなど下級の職と捉えていたらしい。それでも、のぞみは3年から助産師課程に進むことを約束する。

 大学入学後、母の干渉や束縛は和らぎ、親子関係も少しずつ改善。2人で旅行するまでになる。初めて体験するキャンパスライフも楽しく、のぞみにとっては、遅すぎながらも幸福な日々だった。が、それは2016年末に崩れる。助産師課程に進む試験に落ちたことで、母の怒りが再燃したのだ。「不合格なんて信じられない。この嘘つき!」と罵倒するしのぶさんに、のぞみは「でも、進級にするにつれ手術室看護師になりたいと思うようになった」と自分の意思を素直に話した。しかし、母がそれを受け入れることはなく、卒業後は助産師になることを改めて約束させられ、日々が過ぎていく。

 2017年11月のある日、31歳で大学4年生ののぞみは悩んでいた。先日、母に受けさせられた助産師学校公開模試の結果がD判定だったからだ。母が激怒することは明らかだった。が、実は同年7月、のぞみは滋賀医科大学附属病院の看護師試験を受け採用内定をもらっていた。自分は本気で看護師になりたい。この機会を逃したくない。

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 必死に説得するのぞみに、母親は吐き捨てた。